第16話 私また何か間違ってしまったかしら

「ごめんなさいっ!! サボるつもりは無かったというか、皇女陛下という立場であるからこそ怠けても良いと思っていたというか、きっと私の部下たちは優秀だろうから私が何かをする必要がないと思っていたというか、むしろ私がやる気を出し何かしたせいで良くない方向へこの国?を導いてしまいそうだなと思ってしまったら『いっそのこと何もしない事こそが正解ではなかろうか?』と思ってしまい、ついついだらけてしまっただけで……トップが、部下が一生懸命働いているのにだらけているのは流石にダメだよね……っ」


 そして私はイプシロンから注意される前に『私の何がいけなかったのか気付いていますっ!! だから次回からは、気付いているからこそしっかりと反省した上で改善させていただきますっ!!』というアピールも込めて自分から謝罪をする。


 確かに、自分が部下であった場合を考えた場合、必死になって深夜まで毎日働いている私の横を定時で帰宅する上司を見ては『いつか殺してやる』と呪っていたものである。


 それを考えると『皇女陛下だからだらだらしても良い』という考えは私の勤めているブラック企業の上司の行動そのものであり、私は自分のしてしまった行為に自己嫌悪に陥ってしまう。


 そして申し訳ない気持ちを抱きつつ私はイプシロンの方へとちゃんとした謝罪をする為に顔を上げる。


 するとそこには『いったいこの人は何を先ほどから言っているんだ?』と言いたげな表情をしているイプシロンがいるではないか。


 あれ? 私また何か間違ってしまったかしら。


 そのイプシロンの反応を見た私は、また何か間違った対応をしてしまったのではないかと不安になって来る。


 なまじ相手は私のような小娘など軽く捻りつぶせそうな能力を持っている魔獣人である。


 いくら私が生みの親であろうとも、いや、むしろ生みの親だからこそ些細な事で腹立つ事もあるというものである。


 そう、私が他人からの小言には何も思わなくてもそれが親であれば何故か腹が立ってしまうように。


「何の事を仰っているのですか? ミサト様。 ミサト様がサボりたいというのであれば何日でも、それこそ数百年、数千年でもサボってもらっても良いのですよ? むしろミサト様が好きなように過ごし、日々を生きていく事こそが我らの幸せであり、それを妨害して来る不届き者は排除するのが我々の仕事でありますので。 ですのでミサト様には我々の事は何も考えずに好きなように生きていただければと思います」

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