第14話 豚の餌

「カイザル皇帝陛下、少しよろしいでしょうか?」


 私が再びこの国の皇帝陛下であるカイザル皇帝陛下が家畜の餌にも劣るクズである事を再認識し、どうやって息の根を止めてやろうかとあれやこれやと考えていたその時、無礼にも敬礼や挨拶もせずに衛兵が一人駆け込むように入ってくると一直線でカイザル皇帝陛下へと向かって来るではないか。


ちなみにこの時我々近衛兵達は私を含む全員カイザル皇帝陛下を守ろうとすらしていなかった事から見てもいかに嫌われているのかが分かるというものである。


「どうした騒々しい。 どうでもいい事ならばその首と身体を切り離してやるぞ?」

「ハッ!! 先ほど天空城を収めるミサト女皇帝と名乗る者から、我が帝国を収めるカイザル皇帝陛下に遺憾の意を表明と共に賠償金を請求しに来ると申されており、返答の期日は三日、それを過ぎるようであれば侵略行為もやむなしとの──────」

「この煩わしいごみを豚の餌にでもしておけ」

「……………かしこまりました」


そして恐怖から青白い顔に脂汗をかきながら衛兵は陛下へと伝言を告げ、そして告げ終える前にその首を切り落とされ、床に落ちた頭をカイザル陛下がその足で踏み抜く。


その光景を見た私は怒りで目の前が真っ白になり、チカチカと視界が眩くなるも、必死に堪える事しかできない自分が嫌になる。


何のために騎士団へと志願したのか。


あの日の私が今の私を見たらきっと間違いなく幻滅する事だけは分かる。


「そしてなんだ? 三日以内に返事を寄こさなければこのバルシャワ帝国を侵略するだって? フザケンナっ!! できる訳が無かろうっ!! 大陸一の大国であり軍事力も大陸一であるこのバルシャワ帝国を侵略するだと?しかもあろうことかあの天空城の皇帝、それも女皇帝がっ!! 嘘もここまでくると死罪、一族全て死罪の大罪であるっ!! 誰に喧嘩を売った事を知らしめねばなるまい。良いかお前らっ!! 今からこの戯言を言った奴を探し出してこの俺の目の前に突き出せっ!! ただ殺すだけでは済まさぬっ!! この俺自らじっくりと、この俺に喧嘩を売った事を死ぬほど後悔させたうえで殺してやる。 そもそも天空城はバルシャワ帝国の土地である事すらも分からないような知恵遅れなど直ぐに見つかると思うのだがなっ!!」


そして、先ほどの衛兵が申した内容がカイザル陛下の怒りに触れたのか、太ったその身体についた贅肉を揺らし、唾を辺りへまき散らしながら叫び散らすその光景を我々近衛兵達は冷めた目で見つめるのであった。

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