第13話 願望が聞かせた幻聴




 白く輝く美しい宮殿、その中を数多の、そして多種族の美女を侍らせバルシャワ帝国皇帝カイザル・ドミナリア二世は中庭が見える廊下を歩く。


 この廊下の中庭部分には壁が無く、柱のみの作りであり、美しい中庭の花々や噴水が見えるように作られている。


 そしてそのカイザル陛下の周りにいる美女達の表情は暗く、瞳には気力が無いのが見てわかる。


 むしろ彼女達が美しいが故に、暗い、又は無表情なその姿は蝋人形の様な不気味さすら感じる程である。


 それもそのはずで彼女達は全て他国を侵略した際奴隷にした者達であるからである。


 家族や恋人を殺され、抵抗する事も出来ず半ば無理やり連れてこられたのならば、生きる気力も沸かないというのも納得できる。


 そしてこの美女達の中には他国のみならず自国の村や部族を襲って連れ去った者も含まれている。


 その事からみてもいかにこの皇帝が、そしてこの帝国の内部が腐っているかが分かるだろう。


「コーネリアよ」

「はっ!」

「いつになれば天空城へと送った者達が帰って来るのだ?天空城へと送って早二週間となる。いささか遅すぎやしないか?」

「それにつきましてはまだ時間がかかりそうであるとの連絡が天空城派遣部隊より伝言がきております。ですのでまだ時間はかかるものと思われます」

「ふむ、全くもって使えぬ。帝国の上位ランカーを集めて来たというのにこの体たらくでは、見せしめが必要だな。天空城の魔石が取れさえすれば更に他国への侵略ができるのに、目の前に餌をぶら下げられてお預けされている気分だな」


 ゲスが。


 と心の中で思うものの決して言葉や表情には出さない。


「もう少しの辛抱かと」

「おおっ! そうだっ!!」


 そしてカイザル陛下は何か良い事を思いついたとばかりに顔をほころばせる。


「もしもう二週間奴らが帰ってこない場合はコーネリア、貴様の初めてを頂くとしようっ!! であれば早く帰還しても遅く帰還したとしてもどちらも喜ばしい事ではないかっ!」

「カイザル陛下、冗談は────」

「────冗談ではないぞ?腹をくくれ」

「しかし契約では────」

「────契約? それがなんだと言うのだ。我はこの帝国の皇帝であるぞ?皇帝の前にそのような契約など無意味だと何故分からない。むしろ今まで我慢してきてやった恩をその身体で返してくれても良いのだぞ?」


 ゲスが。


 結局、近衛兵を女性のみにしたのも全てはカイザル陛下の欲望の捌け口にする為であると、自身でそういっているような物言いに、今日何度目かになる怒りが込み上げて来る。


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