第12話 玉座に座る我れらが主
そして俺たちは玉座の間へと集まる。
目の前には白を主としたミサト様に相応しい、石工士の技術の高さが一目で分かる白亜色の椅子が階段四段上に置かれている。
その後ろにはここ天空城の国旗が描かれているシミや皺一つもない垂れ幕が垂れ下がっている。
そして縦に長い玉座の間の中央には赤い絨毯が玉座の手前まで伸びており、その絨毯の上で決められた配置で膝をつき、頭を垂れてミサト様が来るのを待つ。
どれ程待っただろうか。
十分程だろうか。
それとも三十分程だろうか。
やけに長く、そして静かな空間で我が主が来るのを待っているのだが、今まで待ち続けた三百年間と比べればこの程度どうとでもない。
そして時間が過ぎれば過ぎる程、もうすぐ会えるという事実が近づくにつれ俺は興奮して行き、静まり返った玉座の間に俺の心臓の音が聞こえてくるのではないかとすら思う。
そんな事を思っていると、玉座の間に「コツコツ」という、ヒールで歩くような足音が玉座がある場所より左側から聞こえてくる。
そしてその足音は止まる事無くこちらへと近づいてくるのが分かる。
来たっ!!
そう思ったその時、足音は俺の前で止まり、玉座に座る衣擦れの音が聞こえてくる。
そもそも普段緊張という言葉とは無縁である俺なのだが、今は唇や手足が震え、喉は張り付き、頭が真っ白になってしまいそうな程緊張感を感じている。
「表を上げよ」
その凛とした、まるで鈴や風鈴の音のような声音から発せられる短い言葉。
その一言で、ここに居る者一人で国一つを崩せる程の猛者達がその短い言葉に従い一斉に頭を上げる。
それは、この光景を見た、俺達の恐ろしさを知っている者達が見たのであれば、信じ難い光景であろう。
そして俺の目には今、あの日あの時と変わらぬ美しいお姿で玉座に座る我れらが主であり、ここ天空城を統べる女皇帝でもあるミサト様のお姿が映る。
そして思う。
やはりミサト様は俺たちの主であるのだと、魂の奥底で思う。
「皆、演説が終わったばかりで休みたいと思う者もいるとは思うが、今ここに誰一人かける事無く集まってくれた事、まず初めに感謝する」
「いえ、我らが主であるミサト様が招集したのであれば、我々は這ってでもはせ参じます」
「そう言ってくれて有難いよ」
そしてミサト様は俺たちに向けて感謝の言葉を述べてくれ、それへイプシロンが代表して当然であると答え、俺たちは眼差しで「当然だ」とミサト様へと送る。
「さて、本題に入ろうか」
それから当たり障りのない会話を三回ほど続けると、遂に本題へと入るようで、どこからともなく喉を鳴らす音が聞こえてくる。
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