第11話 これが若さか
そしてギシギシと軋まない関節の節々。
…………これが若さか。
そしてこれらから導き出される答えはただ一つ。
どういう原理か分からないのだが、確実に私の身体は若返っているという事である。
そしてここから順当に再度歳を取っていくのか、はたまた人間を辞めて老けない身体になってしまっているのかはまだ分からないのだが、若返ったという事実だけで今現在私の胸は、まるで初恋のように心が躍り、興奮している。
だからと言って四十年生きて来たという事実は消せるものではない。
そもそも四十年間の記憶が残っている以上身体が若返ったからと言って私の精神年齢まで一緒に若返るわけでも無い。
でも、だからこそ、せっかく若い身体を手に入れたのだから、当時できなかったあれやこれやをやってみたいという欲求が津波のように押し寄せて来る。
今までは見えないように心の奥底へと、奥深くのそのまたずっと奥へと、遠くへ置いていた距離の分だけ、そして置いて見えなくしてきた感情の分だけ、その勢いと執拗が増して私の感情を刺激してくる。
今まで押し殺して来た思いで溺れてしまいそうだ。
そして私は決心すると、私が自ら手掛けた子供達である十二星獣とメイドを招集するのであった。
◆
演説が終わってから間もなく、我らが主でありこの天空の国、天空城を統べる女皇帝様でもあるタカヤナギ・ミサト様から我ら十二星獣及び七名のメイド達が玉座の間に呼び寄せられた。
いけ好かないイプシロンの野郎が初め「我らが主がお目覚めになられましたっ!!」と興奮しながら叫ぶ世に我らへと告げた時は、ついに幻覚まで見始めたかと思ったものだ。
無理もない。
我ら主であるミサト様がお眠りになられて約三百年間もの間一度たりとも目覚めていないのだから、イプシロンの野郎の頭がおかしくなったとしても(元からおかしいのだがそれ以上に)別段驚きはしなかった。
実際に俺の目の前で、天空城及びその城下町に住まう国民立ちへ、以前と変わらぬその美しくも高貴なお姿を見せるまでは。
そして俺は、いや、俺たち国民全員はミサト様のお姿を見て皆泣いていた。
これ程めでたいと思える日は無い。
そう思える程だったのだが、今日この日は更にめでたさを更新するようである。
これから目と鼻の先でミサト様と会えるのだ。
嬉しく無い訳が無い。
勿論演説時にそのお姿を見た時もえも言えぬ嬉しさが込み上げて来たものだが、拡声魔術や光魔術で拡大した映像のお姿ではなく、生のミサト様のお姿を見れるというのはやはり格別と言えよう。
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