第3話 私の大切な子供達

そして、皆私の大切な子供達で、優劣など付けれるはずがない。


皆平等にしっかりと、設定の端から端まで覚えているのだから。


「あぁ、我が主よ。長い間寝ていたせいか顔色が優れていないようです」

「イ、イプシロン……一体何をしようと……」


そう言いながら目の前のイプシロンが、現実世界ではなかなかお目にかかれない程の美しい顔を私に近づけて来るでは無いか。


しかもイプシロンの目線は私の目を見つめ、吸い込まれそうになる。


「大丈夫ですよ、我が主。少しお熱を測るだけですから、ほんの少しの間だけじっとしていてください」

「へ……?」


そしてイプシロンは聞くだけで蕩けてしまいそうな声音でそう囁くと、私のおでことイプシロンのおでこを ぴとり とくっつけるではないか。


「ひぃ………っ!?」


美青年におでこをくっつけられて嬉しくない訳ではない。


ましてやそれが私の作ったキャラクターであればなおさらである。


しかしながら四十路となる私の精神は喜びよりも先に恐怖心がわたしを支配する。


だからカエルがつぶれる様な声が出ても何もおかしくは無い。


そう、おかしくはないのだ。


「熱は……無いようですね。我が術等、主様からすれば児戯に等しいと事は重々承知しておりますが、それでも心配なのです。一応、応急処置としてキュアを主へかける事をお許しください」


まつ毛長い、目がキラキラしてる、耳が天国、髪がサラサラだし良い匂いもする……。

あ、なんだか身体がポカポカするし、思考も少なからずクリアになって来たような……それにしても急遽アップデートをしていて、その間に私は寝落ちでもして車にしかれる悪夢でも見ていたのだろうか。


にしてはやけにリアルすぎるわ匂いや触感まで感じるわでアップデートしすぎでは?そしてこのアップデートしたゲームの世界を一秒でも早く体験してみたい。


今の私は目の前のイケメンよりもアップデートされたゲームの世界を遊ぶことの方が優先度が高い。


そもそも四十路の私が今更恋やなんやと浮かれるだけ悲しいだけである。


しかしながら、私はどれ程の間眠っていたのか。


そう思った瞬間わたしは一気に血の気が引いていくのが自分でも分かる。


「し、仕事……」

「はぁ、仕事でございますが。主様が心配するような事は何一つもございませんっ!!なぜならばわれら十二星獣達によって主様がいつ目覚めても良いように全て終わらしておりますっ!!」

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