閑話 七夕の願い事

「アカリ、あそこに見慣れないものがあるのですが・・・」

駅前まで買い物にやって来たところで、普段とは少し違う光景にソフィアが視線を向ける。


「ああ、あれは七夕飾りだね。この時期の行事の一つだけど、近くで見てみる?」

「はい!」

そうして手を繋ぎながら、二人で寄ってみれば、用意された笹には既にいくつもの短冊が括り付けられていた。


「今はこんな風に、願い事を書いて飾るのが一番身近に感じられるところかな。

 元々は紙の色とか、他の飾りにも色々な意味があったり、何を願うかについても決まり事があるらしいけど、皆で楽しむ分には緩い感じになってる気がするね。」

「なるほど・・・神社でお祈りをするのとはまた違うようで、興味深いですが、こうして眺めるだけでも鮮やかなものですね。」


「うんうん。ちなみに、そこに置いてある短冊に、誰でも願い事が書けるようになってるけど、ソフィアもやってみる?」

「えっ・・・ど、どうしましょう。」

こちらの行事には興味を持っているはずのソフィアが、少し悩んだ表情を見せる。


「だって、私の一番の願い事は、もう叶っていますから・・・またすぐに別のことを願うのは、申し訳ない気がしまして・・・」

「そ、そっか・・・確かに私もだね。」

絡め合ったままの指に、ぎゅっと力がこもるのを感じて、すぐに握り返した。


「まあ、もう少し気軽に考えてもいい気はするけどね。まだ何日かはここに飾られていると思うから、気が向いたら書いてみようか。」

「は、はい・・・!」


「そういえば、七夕に合わせた食べ物もあったはずだから、これからの買い物と一緒に探してみる?」

「それは気になりますね・・・お願いします、アカリ!」

ソフィアの声が弾むのを感じながら、七夕飾りをもう一度眺めた後、私達は肩を寄せ合い、お店のほうへと歩き出した。

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