第33話 呪具について

「それでは、いよいよ今日の本題ね。

 二人とも、行きましょうか。」

「うん、どんな話が聞けるのかな。」

「本当に、気になります・・・!」


海沿いの公園で穏やかな時間を過ごした後、

今回、旅をすることになった理由でもある、

このところの悪霊祓いで続けて見付かった、呪具についての相談へ。


元は美園が、神社としての仕事で来ているわけなので、

ここはもちろん美園が中心となって、

私はその場に立ち会った友人という位置づけだ。


「ソフィア、万一のことを考えると、

 こうしたほうが良いよね。」

「はい! 私はどちらでも。

 必要があれば、すぐに出てきますので。」

「ええ、まずは隠れてもらおうかしら。」

また、ソフィアについては余計な詮索を避けるため、

私の中に居てもらうこととなった。



場所は、その人が経営しているという、

占いをするための小さなお店。


神社とは少し違った方向にも思えるけれど、

その人は様々なところにお参りに行っていて、神社の事情にも通じているらしい。

むしろ、そうでもなければ、

美園がこうして、お使いに来ることも無かったのかもしれない。


何はともあれ、美園と共にそのお店を訪れて、

問題の呪具について、まずは説明するところから。



私達が着いてすぐに、お店は貸し切り状態となり、

他の占い師の人達も、今日は出勤していないらしい。

窓にはブラインドが下ろされ、防音についても配慮されているなど、

しっかりとしたお店のようだ。


そして、自分達が言うのもなんだけど、

なかなかに濃い時間を過ごしたから、自然と話は長くなってしまうけれど、

様々な人の相談を受ける職業柄か、とても聞き上手という印象で、

私達が伝えたいことは、しっかりと話せたように思う。


・・・もちろん、ソフィアのことは上手くごまかしながら。

『ミソノ、そこは自分の神社の神様が助けてくれたという流れで、

 話せば良いのではないでしょうか。』

うん、存在を隠されている当の本人が、

手厚くサポートしてくれるのにも助けられた気がする。



そして、その占い師さんが話してくれたことには、

こうした呪具には、好んで収集する人もいるらしい。


ただ、本当にこうしたものが好きな人は、

その危険性も認識した上で、管理することがほとんどだけど、

例えば泥棒が入るなどして、知識の無い人の手に渡ってしまえば、

そこから事件を引き起こしてしまう・・・ということも起こりうるという。


いや、起こりうるというか、一般的に知られた話ではないけれど、

実際にはそれが原因だったという話も、ささやかれる件があるらしい。


いずれにせよ、問題の呪具については、

こちらが持ちうる限りの情報を渡したので、

占い師さんの伝手をたどって、詳しく調べてもらえることになった。



「それじゃあ、何か情報を掴めたら、

 麗鹿うららか神社さんに連絡するから、待っていて頂戴ね。

 お二人とも、また会いましょう。

 ・・・そちらの守護霊さんにも宜しくね。」

「「『・・・!!!』」」


うん、とりあえず何でもない風に挨拶をして別れたけれど、

あれは、はったりとかじゃ無さそうだったよね・・・


『気付かれてました・・・? 私のこと。』

「うーん・・・あれだけでは何とも言えないけど、

 どちらかといえば、本当に分かってた可能性のほうが高いかな・・・」


『どうしましょう。それなのに姿を隠していたとなると、

 失礼になってしまったのでは・・・』

「自分の身の安全よりも、そちらを気にするあたり、

 さすがソフィアだという気がするわ・・・」


「まあまあ、すぐに指摘してこないあたり、

 こっちの事情も理解してくれてるんじゃないかな。

 もしソフィアを危険に晒すようなら、私が絶対に守るけど、

 本当に鋭いだけの良い人だったら、一緒に謝ろうか。」

『ありがとうございます、アカリ・・・!』



「それにしても、盗品だったとすれば、

 いわゆる、裏のルート的なもので売りさばかれてたり、

 そういうのに関わる人達が、悪霊の影響を受けてる可能性もあるってことよね。

 面倒なものに巻き込まれてしまったかもしれないわ。」

「その可能性も確かにあるけど、私もソフィアも全力で協力するから、

 あまり重く考えすぎないで、美園。」

『はい、アカリの言う通りです・・・!』


「ええ、ありがとう。

 調査の結果がどうあれ、近くで悪霊が絡むような事件が起きれば、

 私はこれからも、それを祓うことは続けてゆくわ。

 もちろん、灯もソフィアも、頼りにしてるわね。」

そうして、今回の旅の一番の目的は、無事に果たされたのだった。


もちろん、旅を楽しむ時間・・・

ひいては、ソフィアが都会というものに触れる時はまだ続けたいし、

現に、勉強になっていることもあるので、

良い意味で遊ぶ時間も、しっかりと過ごしたいと思う。


「それでは、そろそろ宿へ行く時間ね。」

「うん、そうしようか。」

「どんな場所なのでしょうか、気になります。」

そして私達は、今夜の宿へと歩き出した。

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