第17話 違和感

「ここまで戻ってきたけれど・・・ソフィアがそこの公園で感じた気配が、

 お稲荷様と似ていたというのは、確かなのよね?」

「はい。あの時の私にとっては、まだ知らない何かでしたが、

 今にしてみれば・・・!」

不意に出会ったお稲荷様の社から、足早に引き返して、

私達は問題の公園へ。


「やっぱり気になるのは、ソフィアがそれを感じた後に、

 すぐに消えてしまった・・・ということだよね。」

「はい。そこまで弱い気配だったのであれば、

 なぜ後になって、はっきりと思い当たることが出来たのでしょうか。」

本当に取るに足らないような存在であったならば、

こうしてソフィアの印象に残ることもないだろうし、

規模は小さいとはいえ、確かに祀られたお社からの気配と似ていることも、

違和感を覚えるには十分だ。


もちろん偶然の結果という可能性もあるけれど、

私はソフィアを、その魔法や鋭い感覚を信用している。



「うーん・・・こうして考えているだけでは、答えを出すのは難しそうだけど、

 中に入って詳しく調べるのは、今からでは大変よね。

 時間や体力の面でも、何が待っているか分からないという点でも。」

「それはそうだね。悪い意味で何かある可能性も高そうだし・・・

 体力の面では、私は心配ないけど。」


「それが大丈夫なのは、あんただけよね。

 ところで、今日の授業中に何回居眠りをしていたか、聞いても良いかしら?」

「さて、覚えてないなあ・・・・・・」


「アカリ、その点については私が詳しく語ることも出来ますが、

 ちょうど、嫌な気配が近付いてくるのを感じました。警戒を・・・!」

うん、最初の話題から嫌な予感がするけれど、

今はその話をしている場合ではなさそうだ。


「了解。美園も大きな声や動きに気を付けて・・・

 認識阻害の強化は、大丈夫だよね?」

「もちろんです、アカリ。」

辺りを慎重に確かめながら、ソフィアが魔法を調整している。

認識阻害の魔法は便利だけど、こちらが目立つようなことをしていれば、

隠し通せる限度というものがあるだろう。



「来ました。あちらの道から・・・公園に入って行くようですね。」

やがて、ソフィアが示す方向から、

端的に言って柄の悪そうな人が、私達から少し離れたところを通り過ぎてゆく。

いや、今気にするべきは、そういう雰囲気ではなくて・・・


「美園も分かるよね、あの人の気配。」

「ええ、確かに良くないものを感じるわ。

 ・・・何か、混ざり合っているようだけど。

 片方って、もしかしてお稲荷様・・・?」


「はい、ミソノの言う通りです。

 そしてもう一つは・・・あの川で祓ったものと、似通っていますね。」

「っ・・・!」

「もしかしたらとは、思っていたけど・・・

 そういうことなのかな。」


「そのまま奥のほうへ向かっているようですが・・・・・・!

 気配が急に消えました。」

「ええ、私にも感じられなくなったけれど・・・」

「ソフィア、距離とかの問題で薄れたんじゃなくて、『消えた」ってことだよね?」

「はい、アカリ・・・!」


「・・・戻ろうか、ソフィア、美園。

 これは、しっかり作戦を考えたほうが良い気がしてきた。」

「はい。私も同感です、アカリ。」

「ええ、一筋縄ではいかなそうよね。」

私達は警戒を強めつつ、その場を後にした。



「それじゃあ、また明日ね。」

「うん。それまでに少し、調べものをしておくよ。」


「こちらもそのつもりだけど、無理はしないようにね。」

「それは私も同感です、アカリ・・・」

「あはは、気を付けるね。」

美園の神社の前で、明日に向けて少し打ち合わせて、今夜は解散。


「ただいま、戻りました。」

そして美園が鳥居で一礼し、家へと入ってゆくのを見送る。


「ミソノ、この神社の気配・・・と言えば良いのでしょうか。

 それが高まっているように感じられます。」

「私もなんとなく感じるけど・・・ソフィアは鋭いね。

 やっぱり、水神様からいただいた力のおかげ?」


「そうなのかもしれません。

 ・・・いただいて早々に、頼ることになるのかもしれませんが。」

「うん。でも、この辺りの悪霊を祓うために使うなら、

 何も問題は無いんじゃないかな。むしろ、こういう時のための力かも。」


「はい・・・そう考えたいと思います、アカリ。」

そして私達も、美園の神社に一礼して、帰路についた。

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