第467話 見過ごせない行為
◆
フランお嬢様が飛び立ってから数日後、聖教国の兵士達が一気に苦しみ出した後次々と死んでいくという摩訶不思議な出来事によりこの戦争は幕を閉じた。
そして恐らくこの現象はフランお嬢様が自称神と名乗る愚か者を討伐したが故に起きた現象であると判断した私は、今か今かとフランお嬢様がここドミナリア家へと帰って来るのを待っていた。
だからこそ、ノア様一行によりフランお嬢様が瀕死の状態で発見されたと聞いたときは心臓が止まるかと思った事を思い出す。
まさか?あの、底の見えないフランお嬢様が?
そう思わずにはいられなかったし、フランお嬢様の事である。なんなら今すぐにでも「やっと帰って来れましたわ、メイさん」と言って私の前に現れるのではないか?と思わずにはいられなかった。
しかし、ノア様一行により丁重かつ厳重の注意を払ってドミナリア家に戻って来たフランお嬢様を見た瞬間、一気に私の血の気が引き、はしたなくも床に崩れ落ちてしまった。
そしてそれは私だけではなくフランお嬢様の帰りを待ちわびていたブラックローズのメンバー達、そしてメイド長に執事長までもが崩れ落ちているのが見えた。
帰って来たフランお嬢様のお身体は、左腕が肩から無くなっており、右足もまた膝下が無く、更にフランお嬢様のお腹には大きな風穴が空いていた。
あのフランお嬢様がこうまでしなければ倒す事の出来なかった相手、またあのフランお嬢様の全力を出した戦闘を想像するに、一緒に戦える相手ではないと判断すると同時にそれが悔しくて自分自身に腹が立つ。
結局のところ私達はフランお嬢様の強さに甘え、胡坐をかきそして今の強さに満足していた事を思い知らされた。
そして今フランお嬢様は、結界内の時間の進みが遅くなるという特殊な結界魔術により覆われ、フランお嬢様に触れれはするものの、その中を流れる時間は私たちとは異なる時間が流れている。
しかし、時間が止まっているわけではない為緩やかに、そして確実にフランお嬢様が死へと向かっている事には変わりないのだが。
そして私はそんな事を思いながら弱っているフランお嬢様へと見過ごせない行為をしようとしていたノア様の首根っこを掴むとそのまま後ろへとぶん投げる。
フランお嬢様をギリギリのところで延命処置を施し、連れ帰って来た事に関しては心より感謝はするがそれはそれ、これはこれである。
意識のないフランお嬢様へキスをしようなど、例え神が許したとてこの私の目が黒い内は許す筈がない。
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