第466話 恐らくはわたくしもここで死ぬのであろう

「わじひどりで死んでなるものがっ!!!わじひどりで死んぬなどそんなごどあっでだまるがっ!!」


気をつけていた筈である。


しかしわたくしは神の糞野郎の表情みた瞬間、そこに隙が出来てしまっていた様である。


窮鼠猫を噛むとはよく言ったもので、追い詰められた神の糞野郎は自分の命と引き換えに魔術を放ち、その魔術はわたくしが施した結界もろともわたくしの腹に風穴を開けていた。


とりあえず結界魔術で風穴を塞ぎ止血及び背骨の代わりを、そして即座に回復魔術で神経を何とか再生させて繋げるものの残りの失った臓器まで回復する時間は、やはりくれなかった。


悪役であるのならば変身シーンや回復シーン、そして必殺技を撃つ時間はしっかりと待つという常識をこの神の糞野郎はないのだろうか?


無いからこそのこのクソ具合なのだろう。


テンプレの一つや二つくらいできないで何が神であるか。


大口叩くのもいい加減にしてほしい限りである。


そして目の前には、先ほどの一撃で魔力を使い果たしたのか空気を読まずに拳で殴りかかってくる神の糞野郎の姿が視界に入って来る。


しかしながら臓器を持って行かれては魔術を扱えないわたくしからすれば願っても無いチャンスであると思わず口角が吊り上がる。


神の糞野郎はやはりと言うかなんというか素人が殴るような大ぶりのパンチを繰り出して来たのでギリギリまで惹きつけてから避け、そして狙いすましたカウンター一閃。


神の糞野郎の放った拳を惹きつけて避けたせいで掠った仮面が吹き飛んでいくがそんな事など最早どうでもいい。


今やるべきことは神の糞野郎の顎へと左フックからの右アッパーをお見舞いしてやることである。


そして神の糞野郎の顔がわたくしのアッパーをまともに喰らったおかげで、真上を向いた所ですかさず真横へステップを踏み移動すると、わたくしの全力をもって右拳をその顔面へと振り下ろす。


おそらく、なにもしなくてももう神の糞野郎は死んでいただろう。


それでも、この神の糞野郎が生きているその顔面へと一発どうしても入れたいという気持ちの方が強かった。


例えこの一撃の為に全ての力を使い果たしたとしても、である。


「ぐべっ!!」


そして神の糞野郎は蛙が潰れた様な声を出し二度三度痙攣した後動かなくなり、回復している事も無く確実にわたくしの拳をもってとどめを刺せたみたいである。


それを見届けた後、わたくしはその場で大の字に倒れこむ。


もう立てない。


指一本すら動かせない。


そして強烈な眠気がわたくしを襲って来る。


恐らくはわたくしもここで死ぬのであろう。


そう分かっていても心はどこか晴れやかで、清々しい気分であった。


どんなにもがいても足掻いても死亡フラグは次から次へと現れ、死の運命から逃げる事ができなかった。


どうせ死亡フラグで死ぬ運命であるのならば、このような死に方も悪くない。


そう思わずにはいられない。


そしてわたくしは眠るように瞳を閉じるのであった。

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