第447話 我らが神は絶対である

「ええ、その通りです。何も怖がる心配などございません」


そして、俺の言葉に満足したのかニーサ様はこの場から姿を完全に消して帰っていったのを見て私は「万に一つは無いかもしれないが億に一つはありそうだがな」と呟くのであった。





使えない。


ニーサは思う。


我らが神から血を分け与えられたにも関わらず敵に敗れたのであろう事が濃厚であるドミニクにしても、それが事実であれば戦い方を変えなければならないというボーゼフも、本当に使えない。っと心の中で悪態をつく。


敵に負けるのも、それであたふたするのも我らが神に対する冒涜に等しいと私は思う。


我らが神は絶対である。


例えボーゼフの世迷言が事実であったとしても我らが神さえいさえすれば何の問題も無いのだ。


なのに、何故あんなにも慌てているのか私には理解できない。


それに隠しているつもりだろうけど、私の身体に興味津々なのがバレバレなのよ。気持ちが悪い上に立場を弁えないその態度に腹が立つ。


私の身体は髪の毛一本、爪の先まで我らが神の物となったのだ。


ボーゼフも、私の身体をもてあそんできた男たち同様に切り刻んでやろうかしら?


ニーサは自身の地位向上の為に自ら進んで身体を捧げたと言うのに既にその事実は頭の記憶からは消え去っており、ニーサにとって都合のいいように改ざんされている事に、ニーサは気付かない。


彼女にとっては自ら望んでいたと言えど抱かれたその時から被害者なのである。


「しかし、ボーゼフ程では無いにしろ確かに、どうやってドミニクを倒したのか気にはなるわね。それに、ドミニクを倒した者共は恐らく高レベルの傭兵か騎士達の寄せ集めであろうからそいつらを一網打尽にすれば私はまた我らが神と夜を過ごせるかもしれないしね」


そう、ニーサは一人口ずさむと背中から白く美しい翼を生やして飛び立つのであった。







眼下には聖教国と王国の民が互いに殺し合いをしている光景が広がっており、時間が経つ程命が消えていくのが分かる。


その光景を目にして『本当にコレは正しい行為なのか?』という疑問が強くなって行く。


自分には過ぎたる力を手に入れた教皇様が侵略行為を聖戦と名前を変えて行っているのでは無いか?


今俺の下で戦っている物達は、この聖戦という名の戦争が無ければ本来であれば今も平和に暮らしていたであろう民達なのである。


一度感じでしまった疑問は何度も忘れようと思っても俺の中で消える訳もなく、むしろそう思えば思う程にその疑問が強くなって行く。


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