第446話 強烈な優越感で満たしてくれる

そして私との会話を聞いていた側近が私から指示を受ける前に既にドミニクへ連絡を飛ばしてくれてたようであるが、その結果はドミニクからの連絡なしという信じられない内容であった。


「なんだと………そんなまさか………あのドミニクが、信じられん。信じられないがこれが本当であるとすれば大変な事になるぞっ!!」


「まあまあ、少しは落ち着きなさい。ボーゼフよ」

「し、しかしっ!ニーサ様!ドミニクがやられたという事が事実であるのならば我々の敵は想像以上に強い可能性があり、これからの作戦に支障をきたす恐れがございますっ!!」


もしかしたらドミニクを倒せるだけの戦力が向こうに存在するのではないか?


そんな最悪の事態を想定して慌てふためく私へ、数少ない女性神官の中で唯一我らが神の寵愛を受けれたニーサが落ち着くようにと私へ声をかけてくる。


その、この世の者とは思えぬ美貌に、非の打ち所がないその肢体が目に入り思わず見惚れてしまいそうになるのをぐっと堪える。


彼女はその身体を駆使して今の地位まで登りつめたと噂されており、そしてその噂の信憑性は極めて高いという事実に思わず嫉妬で狂いそうになる。


しかし、事態はそんな事にかまけている場合ではないのだ。


ここで読み間違えれば我らが聖教国は戦争で負ける可能性がでてくるのである。


その事を知ってどうして落ち着いていられようか。


「ドミニクは我らが神の血を頂いているのよ?そんな彼を倒せる者等いやしないわ。万が一倒された事が事実であったとしても、その場合は相手にもそれ相応の甚大な被害を与えているでしょう」


それにとニーサは言葉を続ける。


「血だけではなく、更に美味しく、貴重である物を飲ませて頂くばかりか、身体へと注いでくださったこの私がいるのですよ?恐れる必要が何処にあるというのですか?」


まるでこの世の全ての男性を惚れさせてしまいそうな妖艶な表情をしながら語るニーサはドミニクが倒された所でどうとでもないと言う。


たかが、夜のお相手を一晩しただけで調子にのりやがってと言う負の感情が私の中でくすぶっている事など気付いてすらいないようである。


この様子であれば我らが神は男色の毛がある事すら知らないだろう。


我らが神の事で、目の前のニーサが知らない事実を私は知っている。


その事実が、私を強烈な優越感で満たしてくれる。


「あ、ああ。そうであるな。ニーサ様がいるのであれば我々が負ける事など万に一つありますまい」

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