第441話 我慢していた涙
「今まであなた達が奴隷という事に甘えて素顔や名前を隠して来ました事をお詫び申し上げますわ。わたくしの本名はフラン・ヨハンナ・ドミナリアという名前です。わたくしの顔をご存じな方は、ドミナリア家が貴族至上主義であるという事を耳にしたことがあるかと思います。色々と言い訳を言おうと思えば出来るのですけれども、結局のところわたくしが素顔と名前を隠していたのは、貴族至上主義であると思われるのが怖かったただの臆病者だったからです」
わたくしは清水の舞台から飛び降りる気持ちで自らの正体を、仮面を外して露にしたのだが、ブラックローズの面々はその事に驚く事はせず、どちらかというとブラックローズの解体の方で感情的になっている方が多いように見える。
一瞬『前々からばれていた?』と思ったのだが、このわたくしの完璧の演技力を持ってすれば正体がバレるという事は考えられない。
そう考えると消去法で、わたくしが貴族至上主義で有名のドミナリア家の娘という事実なんかどうでも良いと思える程にわたくしとの信頼関係が築き上げられているという事であろう。
その事実を知りわたくしは思わず我慢していた涙を一つ、流れ落としてしまった。
実際は既にローズ=フラン・ヨハンナ・ドミナリアであるとバレてしまっているのだが、『貴族至上主義で有名のドミナリア家の娘という事実なんかどうでも良いと思える程にわたくしとの信頼関係が築き上げられているという事であろう』というフランの推理は当たっていたりするのだが、その事に誰も気付くものはいない。
一回流れてしまうと後はいくら我慢しようとも無意味であり、後はダムが決壊したかの如くわたくしの両目から滝の様に涙があふれ出て来てしまうのを止める事が出来ず、ついには鼻水まで垂れ流してしまい、それをメイさんが優しくハンカチで拭ってくれる。
そして、本日をもってブラックローズは『一時解体』するのであった。
◆
元ブラックローズの面々はフランお嬢様がお帰りになられた後も耳を澄ましてみればどこかしらから泣き声が聞こえて来た。
しかしながら全員、奴隷から解放されたとはいえ戦争が終われば再結成するという強い意志を持っており、またこの戦争が終わるまでこの戦争を、フランお嬢様にバレない様に支援する気満々である事が皆バレバレである。
そもそもフランお嬢様からは好きなように生きなさいと言われている為、好きな事(フランお嬢様の役に立つことをする)をして生きて行くだけである。
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