第440話 悲しくない訳が無い
「ぐぬぬぬぬぬっ!!」
そしてわたくしはセバスへ視線を向けると────
「はい、把握しておりました。しかしその事を、ドミナリア家の違和感を把握できたのはフランお嬢様のお陰でございます。なので我が主はフランお嬢様にかわりはありません」
────そんな事をぬけぬけと言うではないか。
わたくしを主と言うのであれば何故今まで黙っていたのかと、後で問い詰める必要があると胸に刻み込むのであった。
◆
家族との縁を切ろうと意気込み、いざ乗り込んでみたら逆に家族の絆の強さを知る事となった。
ちなみに、お兄様やお母様がわたくしの事を「どんくさい」「詰めが甘い」「むかしから何処か抜けている」と言ってはにやにやと笑われていた事は、きっとわたくしの気持ちを察してくださり和ませようとしたジョークに違いない。
「そこが可愛いのであろうっ!」「むしろだからこそ悪い虫が付かないよう父親である私がフランを守ってやらなければならないのだっ!」と父親がかばってくれていたのだけれども、何故一回も否定しないのかじっくり話し合う必要があるみたいである。
そんな事を思いながらわたくしはもう一つ大きな仕事を終わらすべく、ジュレミア邸へと来ていた。
そのして目の前には今まで何故か増え続けて、今や四百弱もの人数となった全ての奴隷を集めて、わたくしはこの奴隷たちへ最後の命令を下す。
「本日を持ちましてブラックローズは解体致します。各々自由に生きて、これからの人生を楽しんでください。強いて言うとすればこの度わたくしを皇帝として新たに生まれたオウルデストウッド帝国へ来るというのであれば、今からお配りするこのカードを門番に見せ、元ブラックローズの一員である事を提示して頂いた方には生活が軌道に乗るまでの支援は致します。また、ここで築いていた飲食店等はジュレミアに託しますのでこのままここで働きたいという方は、戦争が終わった後に、同じく元ブラックローズの一員であった証のカードをジュレミアへお見せ頂ければそのまま雇うようにしておきます。では、皆様良い未来を、誰でもない自分の為に謳歌してください」
わたくしは言葉を止めてしまうと泣いてしまいそうだったため、ここまで一気に告げる。
奴隷と言えど良き隣人、良き友人、良き家族の様に接し過ごして来たのである。
悲しくない訳が無い。
奴隷たちはわたくしの言葉を聞き皆一様に号泣し始めており、思わずもらい泣きしそうになるのをぐっと堪え、そしてわたくしは仮面を取り、奴隷たちへ素顔を見せる。
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