第394話 筋肉ゴリラ

その為十五年近く傍でお世話をしてきたメイドからすれば、少しでも長くこの可愛らしい反応をするアルビンを見ていたいと思ってしまうのは仕方のない事であろう。


「あ、言い忘れておりましたが先ほどドミナリア家の者からのお手紙を頂いております。おそらくはフラン様の────」

「それを先に言えっ!」


そう怒鳴りつつメイドから手紙を奪うアルビンであるのだが、その表情は本日一番感情が表に出ており、こんなにも分かりやすい反応をしているのだが本人は気付いていないなんて、可愛らしい、とメイドは思う。


「あ、またまた言い忘れてましたけど、ノア様からもお手紙を預かっておりますのでご確認頂きますよう、宜しくお願い致します」

「………フン」


ほんと、すぐに表情に出て可愛らしい。と側仕えに思われている等とは待ったく思っていないアルビンはノア様からの手紙の内容に強い決意を宿すのであった。





「やっと来たかチビ助」

「うるせーぞこの筋肉ゴリラっ!!」


ノア様からの手紙に書かれていた事は三点。


●風嵐の誓いメンバーへの加入

●オズウェルが得たブラックローズ並びにフランの強さの秘密、その情報のやり取り

●その情報をもとに戦力強化合宿


大まかに纏めるとこの三点となるのだが俺には疑問に思う事があったので、せっかく筋肉ゴリラだけではなくノア様も居るので一つ一つ聞いていく事にする。


「ノア様、俺を呼ぶのは良いけどさ、まず風嵐の誓いってなんだ?」

「フランは今強大な敵と戦っている。その戦いに参加できる程の実力を身に付け、フランと共に戦えるまでになる事を目標とした組織だ」

「………は?」


俺の問いにノア様は普段見せない様な真面目な表情で話し始める為思わず身構えてしまったのだが、その内容を聞いても俺はノア様が仰った言葉の意味を理解する事が出来なかった。


そんな時レオが俺の頭を片手で掴むとぐるぐると円を描きながら回し出す。


「だからフランは今強大な敵と戦っているんだよ。脳みそ詰まってんのか?」


脳みそが筋肉でできているレオにだけは言われたくないと思うのだが、ここで反論しても話が進まない為グッと堪える。


俺はレオと違って脳みそがしっかりと、ぎっしりと詰まっているからな。


「しかし、あのフランが強いとも思えないのだが。なんなら俺よりも弱いんじゃないのか?」

「まぁ、普通に考えれば上級貴族の娘って時点で争いごとは苦手と思ってしまうのも無理ないのだが、間違いなくここにいるメンバー全員で戦っても十秒と持たずして負けてしまう位にはフランは強い」

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