第393話 フランの事を好きだなどと言うのか
「いいえっ、わたくしとですわよっ!」
「うるせぇお前ら。ちゃんと全員踊ってやるからそうがっつくんじゃねぇっ!!」
「「「きゃーっ!!」」」
リアム家、リアム邸にて主催されたパーティーも今や挨拶周りや食事も終わり今は余興の時間である。
プロの楽士を呼びつけ、小気味良い音楽が室内を流れている。
その音楽に合わせて若い者はダンスを楽しみ、大人は情報交換、又は化かし合いという名の歓談を楽しんでいる。
そう、殆どの者はこの時間を楽しんでいるのだがアルビンだけは今日一日中機嫌が悪い。
そして女性陣とのダンスも終わり適度な運動により熱った身体を夜風で冷ますべくバルコニーへと向かう。
「たく、たかがダンスで群がりやがって。こんなもの何が面白いのか分かりやしない」
「そうは言いますが坊ちゃん、坊ちゃんは家柄だけでなくその容姿も整ってらっしゃいます。異性が坊ちゃんに惹かれるにも無理からぬ事。家柄と容姿、この二つを持ってしまっている以上致し方ないと思いますのでそこは我慢して乗り切るしかないですねぇ」
そして俺が誰も居ない事を確認した上で愚痴ると20歳歳上の側付きメイドから我慢するしかないとばっさり切られる。
「どうせ彼女らは俺の権力と見てくれだけにしか興味が無い奴等ばかりなんだろ?何でそんな奴らに優しくしなきゃならねーんだよ」
「そうですねぇ、お坊ちゃんはフランお嬢様が居ないから機嫌が悪いのも分かりますけど、どこに目と耳があるのか分からないのですから、とりあえずは少しは落ち着いてみてはどうでしょうか?そうすれば少しは心に余裕が生まれて彼女達にも優しく出来るのでは?」
「な、何でそこでフランの名前が出てくるんだっ!」
「好きなのでしょう?バレバレですよ?アルビン様。まぁ、ばあやからしますとそれはそれで普段のアルビン様とのギャップで可愛いいと思えるので良いのですけれども」
しかしながらこのメイド、言うに事欠いてこの俺様がフランの事を好きなどとほざきやがる。
一体、何処を見れば俺がフランの事を好きだなどと言うのか。
「フン、目でも腐ったんじゃないのか?この俺があんな女の事など好きになる訳が無いだろう。あいつにはいつも子供扱いされて腹が立っているんだ」
そう言い返すアルビンであるのだが、それは自分をフランと同じ目線で見て欲しいという欲求では?とメイドは思うものの決して口にはしない。
むしろ初心故に自分の恋心を持て余しているアルビンを見れるのはこの時期しかないのである。
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