第389話 低俗な種族
「それは私に何のメリットがあるのかと言っておるのだ」
その言葉にエルフの身体が一層震えるのが見て取れる。
しかしながら私はたかがエルフの為にこの身を使うつもりなど毛頭ない。
このエルフが申している事が例えエルフの中では一大事であろうと、それで何人死のうと私には何ひとつ問題が無いのである。
「この度の報酬といたしまして、エルフの娘を十人、スサノオ様に生贄として捧げるつもりでございますっ!勿論、生贄に捧げるエルフの娘達は全てハイエルフないし貴族の血筋である娘達でございますっ!」
そうエルフの老人が叫ぶように話すと、入り口で待っていたのか十名ものエルフの娘が私の部屋へと入ってくる。
そして入室して来たエルフの女性達はスサノオの前で一列に土下座の様な体勢を取る。
その光景を目にしてエルフの長老は『コレならば黒竜も納得するであろう』と一人安心し、生贄として選ばれた女性達は恐怖で身体を震わせていた。
「一体、何の真似だ?」
「な、何の真似と言いますと?」
しかし、今現在人型となり豪勢な椅子に足を組んで座っている黒竜であるスサノオの表情は喜ぶどころか不機嫌になると、組んでいる足を組み替えながら長老に問い掛ける。
しかし長老からすればスサノオが何について問い掛けているのか、そしてどうして不機嫌になっていくのか分からず、崖底へと飛び降りる覚悟で問い掛ける。
「お主は我には妻がいると言うのにその妻の居ぬ間に他の異性と関係を、妻を裏切る様な行為をしろとでも言うのかと申しておる」
声音自身は静かであったのだが、だからこそその声音から汲み取れる隠そうともしていない怒気に思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
「し、しかしスサノオ様っ!貴方様の奥様は人間であると言うでは御座いませんかっ!?それでしたらそんな人間などと言う低俗な種族よりも我々エルフの方が───」
「まさか、忘れた訳ではあるまいな?このエルフの国は我及び我が妻の物となったという事を。それ即ち先程の貴様が申した言葉は不敬罪に当たる、と我は判断しても良いという事で良いのだな?」
「いえっ!とんでも御座いませんっ!!」
エルフの、確かこのエルフ国の王とかほざいていた老人は態度や言葉こそ下手に出ているのだが我が妻に対する見下した感情や不平不満を隠し切れていないのが手に取るように伝わってくる。
「フン、下手に出ていれば我を御せるとでも思うている様だが、我が妻を見下しており、我が妻の、人間如きの下に付きたくないという苛立ちを隠し切れておらぬぞ?そしてあわよくば竜の血をエルフに、という欲望もな」
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