第388話 俺は歓喜
人間の言葉に反論しようとするも体の自由は奪われ発する事も出来ずしまいには倒れてしまうのだだが、それでもお構いに無しに人間は言葉を発し続ける。
「人間の、いや、これから神となるお方の餌として十二分に育ってくれた事だけは感謝しますよ」
恐らく人間の言い分から他の者達も全員、既にこいつらに捕まっているのであろう。
「殺してやる………っ!!」
「あはははハハハハハっ!!良いですねぇっ!!あなた自身の美学はどうしたのですかっ!!そんな美学などどうでもよくなってしまう程私が憎くて憎くてたまらないのですかっ!?それこそ、本来では口すら動かせない状況であるというのに、その怨嗟の言葉を口にしてしまう程にはっ!いやぁ、実に気分が良いですねぇっ!」
そう高らかに笑う人間の表情を見て俺はこの、人間という生き物を初めて心の底から恐怖を感じてしまう。
この状況を作り出す為に何世代にも渡り色褪せることなくその欲望が受け継がれ、そしてこの欲望の為には同胞すら実験台とする執着。
エルフという長寿種である俺が持つ欲望と、人間という短命種が持つ欲望の質の違いをまざまざと見せつけられ、俺の欲望等人間共からすれば如何にちっぽけなものであったのかと思いさらされるようである。
その事に気付いた俺は歓喜する。
性というものは欲望を受け継ぐ方法でもあるのだと。
そこで俺の意識は途切れてしまう。
◆
「フンッ、これからの運命を悟ったというのにその怒り等まるで忘れてしまったかの様に、実に気持ち悪い笑みで気絶してやがる」
「どうせ気絶する間際に自分の欲を満たす何かを感じ取ったんだろう。それよりも時間が無い。早く次の行動に移すぞ」
「しっかし、こいつはエルフには珍しく色にご執心だったみたいだな。何人か俺のペットとしてもって帰りたいくらいには美人どころがより選り取り見取りだな」
俺がそういうと件のエルフの性奴隷であろう多種多様の女たちが小さく悲鳴を上げながら後ずさりをする光景が目に入り思わず嗜虐心が刺激される。
「今回の目的を違えるなよ」
「へいへい、分かってますよ」
そして俺たちは一人のエルフの男性を担ぎ、姿を消すのであった。
◆
「ふーむ、あの七賢者等という馬鹿どもが消えたと?そう申すのか?」
「は、ハイッ!左様でございますっ!!スサノオ様っ!!」
「それで?」
「そ、それでと言いますと?」
エルフには珍しく顔に無数の皺があり、髪は白髪しかなく、また白い髭を蓄えた如何にも年老いたという言葉が当てはまる男性のエルフが恐怖に震えながらもスサノオと名乗る黒竜へと問いかける。
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