第373話 ドン引きしていた

「きゅいー?」

「あら、月ちゃん。私を慰めてくれるの?なんて可愛いのかしらっ!!」


そんな可愛らしいツキヨミがわたくしに抱きかかえられながら心配そうに見つめてきてくれるので思わずその愛くるしさに母性と父性が弾けそうになる。


このラブリーでプリティーな生き物があのスサノオから生まれて来たという事が未だに信じられないくらいには世界という物は不思議で満ちていると思わずにはいられない。


「フランお嬢様、お気分が優れないようでしたらハーブティーでも───」

「大丈夫ですわ、メイ。そしていつもありがとうね」


そしてツキヨミ同様に何かを感じとったのか本日の側仕え担当であるメイも心配そうな表情で話しかけてくるので、そのままメイの頭を撫でてやるとツキヨミ同様に幸せそうに眼を細める、その表情がたまらなく愛おしい。


そんな至福の時間もドミナリアに仕えるメイドにより扉をノックする音と共に霧散していく。


そしてわたくしはドミナリアの仮面を被り、メイドの入室を許すと三名のメイドが入室してきた。


メイドの名は確か、右から


「シェリー、ボーガン、アリア……」


だったと思う。


そしてわたくしは気付く。


わたくしのドリル───ではなく巻き巻きロールの手入れの真っ最中である三名のメイドの手が止まり、カタカタと震えだしている事に。


「い、家には病弱な母が床抜伏せており、わたしがいなくなれば母を介護する者がいなくなってしまいますっ!」

「私には村に置いてきた娘がいるのですっ!言葉を話し始めたばかりなのですっ!」

「わ、わわわっ、わたしは来月結婚するんですっ!苦節18年、売れ残りと言われ続けた私にもやっと春が訪れるのですっ!」

「「「「お願いしますっ!!なんでもしますからっ!!」」」」


最早三名のメイドは大泣きであった。


しかし、それは普段のドミナリア家を考えれば当たり前の事であろう。


ただ一つ、理解ができない事があるとするのならば、いつの間にかメイド長が彼女たちの輪に加わり一緒になって何でもすると土下座をかましている事であろう。


「彼女たちのミスはメイド長である私のミスでもありますっ!!ささ!!この無能な私を奴隷にして下さいっ!!お嬢様っ!!」


そしてこのメイド長は絶望の表情を浮かべている三名のメイドとは異なり、何故かとても嬉しそうであり、期待に満ち溢れている表情をしていた。


そんなメイド長をみて、ツキヨミとメイド長を除く五名は心の底からドン引きしていた。

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