第372話 懐かしい夢
そして彼女の問いに対して包み隠さず真摯に答えてやるのだが、帰って来たのは研ぎ澄まされた殺意である。
「嘘と思うならそれで良いよ。だけども忠告はしておくよ。既に七賢者の内二人が敗北しているのだからね」
「ふん、わたしをこの馬鹿達と一緒にしないで頂きたいたいわね」
そして彼女は俺の忠告も聞く耳持たずという態度で目の前から蜃気楼のように姿を消す。
その態度に初めこそは苛立ちすら感じていたのだが、よくよく考えてみれば、あのままでは人間共に負けた二人同様に彼女もまた、負けるであろう。
その時の事、主にその後の拷問の事を考えると俺は思わず興奮してしまう。
そんな時、陶器が割れる音が部屋の中に響く。
音の方を見れば人間の奴隷が謝罪しながら割れた陶器をかき集めている姿が目に入ってくる。
そして俺は徐に奴隷へと近づくと、割れた陶器の破片をかき集めている奴隷の手を、陶器の破片ごと踏み抜く。
そして部屋に響く心地よい音色。
「人間ごときが、エルフの所有物を壊しても良いと思っているのか?このグズッ!!グズッ!!そんなっ!事もっ!分からないからっ!人間は劣等種、下等種なんだよこのボケがぁぁぁあっ!!」
そして俺は暴力を振るっても良いという大義名分を得たかの如く奴隷である人間の少女を何度も何度も何度も蹴り倒す。
そして、何度目かの蹴りを入れた所で奴隷は声を上げるどころか動かなくなり、その小さな口からは荒い呼吸音のみが聞こえている。
「ふん、おい誰か。この芋虫を治療室にでも連れていってやれ」
「は………はい、ご主人様」
「オイ待て、なんでお前はこの俺を見て震えているのかな?まさかとは思うけど、芋虫を治療室へと運んでやる程、こんなにも優しい俺をみて恐怖してんじゃないだろうな?」
「め、めめ、滅相もございませんっ!!」
「あ、そう、まあいいや。どうせ芋虫達にどう思われようが関係ないしね」
そして俺は今一度、七賢者である彼女が俺の手に落ちた時の事を想像するのであった。
◆
夢をみていた。
懐かしい夢である。
しかし、目覚めた今ではそれがどのような夢であったのかは、既に覚えていない。
ただ感じるのは懐かしさと悲しさであり、それらが交わりわたくしの胸を締め付けてくる。
前世の家族の夢でも見たのかしら。
こんな夢を見てしまうなんて、遠足で疲れ切った影響であろうか?
そんな事を思いながらむくりと起き上がりベットへ腰かけるとパタパタと可愛らしい羽音と共にツキヨミがわたくしの胸へと飛んでくるのでそのまま抱きかかえてあげる。
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