第367話 閑話2──デメリットしかないという事

「成る程………」


俺の話を聞いたジィレミアは話の内容を理解したにもかかわらずその表情は優れない。


「しかし、だからと言って、正体がバレにくいだけで絶対にバレないという保証はありません。まさか、貴方の正体を知った者を殺して行くとでも言うのですか?」

「まさかっ!?そんな事をするわけが無いっ!!」


ジュレミアの喋る内容に思わず声を荒げて否定してしまう。


殺されて然るべき悪党であるのならばいざ知らず、俺の顔を見た者を殺すなどそんな者は唯の殺人鬼でしか無い。


「アレクサンドラ様?何を勘違いしておられるのですか?」

「勘違い?」

「顔を見られてしまってはその者を殺すしかなくなってしまう様なデメリットしかない貴方を何故わざわざ奴隷として落とさなければならないのか?と問うているのです。そして何よりも貴方に殺生与奪権があるというその考えも烏滸がましいにも程があるぞ小僧?貴様の感情など関係ないっ!!顔を見られた奴を殺して、その全ての罪を背負ってお前も死ねと言っているのだよっ!!!ローズ様のっ!いと尊きお方の覇道に転がる石ころがあるのならば片付けて、自身もローズ様の覇道の邪魔にならぬ様消える以外の答えなど無いだろうがっ!!!!………………すまない、ローズ様の事になると制御が効かなくてな。とにかく、今話した通りお前をこちら側に入れるのはデメリットしかないという事をご理解出来ましたかな?そして、我々の組織は間違っても一般市民を殺してしまう様な低俗な組織では無いのです」

「成る程、ジュレミアさんが仰った事は理解致しました。しかし失礼ながらお聞きいたしますが、自分で言うのは恥ずかしいのですけれども竜殺しの英雄である俺がデメリットしかない?そう仰いましたか?」

「はい。貴方を我々の組織にはデメリットしか御座いません。ですのでお引き取り下さ───ん?これは何の真似ですかね。アレクサンドラ様」


そして俺は、気がつけば手袋をジュレミアに投げ飛ばしていた。





「では、再度ジュレミアさんに決闘を申し込む。そして俺が勝ったら俺を奴隷にしてくれ。もし俺が負けたら其方の好きにしていい。勿論、決闘する者はそちら側が決めて頂いて結構です」


今現在、俺達は場所を移動して板張りの床が敷かれたかなり広い室内へジュレミアの案内と共に移動していた。


部屋の壁際には数十人のメイド達が姿勢良く座っている姿が目に入る。


彼女達は先程まで練習をしていたのであろう。


俺が強引に決闘へと持ち込んだ結果、彼女達の鍛錬が一時中断した事に罪悪感を少なからず感じてしまう。

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