第368話 閑話3──器用な事をしおる
「では、そうですね………ヘレンさん、先程この方が言われた通り、今ここに居ますアレクサンドラ・エレキネスト様が我が組織に入りたいと申されており、それを掛けて決闘を申し込まれました」
「まぁ、あの竜殺しのアレクサンドラ様がですか?」
「然様で御座います。この場に何方か適任者は居ませんかね?」
「かしこまりました。、それでは………メリッサ、来なさい」
「は、ははっ、ハイっ!」
そしてジュレミアはここの訓練場の師範であろう女性と話し合い、一人の女生徒を俺との決闘相手へと見繕ってきたでは無いか。
そのメリッサという女生徒はどう考えても素人に毛が生えた様にしか見えない。
どうやらジュレミアは元から俺を断るつもりなど無かったのだろう。
そう、言うなればコレは俺が気が短い、自分の感情をコントロール出来ない人物かどうか見極めていたに過ぎぬ様である。
その事に俺は気づかれないよう安堵のため息を一つ吐く。
「彼女はとても練習熱心でしてね、最近やっと立ち回りを覚え、少しずつ攻撃の技を覚えていっている所なんですよ」
「それはそれは。そんな方を俺の対戦相手に選んでも良かったのですが?」
「ええ。ですが、口で百の言葉を紡ごうとも、一戦交えた方がお早いでしょう。早速始めましょうか」
「それもそうですね」
「では、これより竜殺しアレクサンドラ・エレキネスト様とメリッサ・アングラウスとの模擬線を行います。両者指定の位置へ───礼───構え───始めっ!!」
審判役のメイドに従い、お互い道場の真ん中へ来ると、そのまま礼をし、試合が始まる。
この一連の流れから見てもメリッサという女性の動きはぎこちなく、明らかに素人である事が伺えてくる。
先程の、恐らくこの道場の師範であろう女性が言ってていた通り、立ち回りを覚えたばかりである為実践経験が乏しいのであろう。
そして、そんな者が相手をするのがこの俺であるのだから恨むのであればあの師範を恨んで頂きたい。
出来れば直ぐに試合を終わらせ、メリッサという女性の武道に対するトラウマが少しでも軽減するように、俺は試合開始早々全力で潰しにかかる事にした。
しかしながらこの俺を相手にこのような素人を出して来た事への苛立ちが無かったかと言われれば嘘になるのだが。
「ひぃぃいっ!!」
「むっ………部分的な結界魔術か、器用な事をしおる」
そして、一撃で仕留めようとした俺の太刀は、甲高い音と共にメリッサの結界魔術によって阻まれていた。
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