第366話 閑話──胡散臭い話
今、帝都の貴族間でまことしやかに話題になっている事が一つだけある。
本来であるにならばいつも通り貴族故のプライドの高さから来るホラ吹きであると流していたのだが、その話を聞いた俺はこの時ばかりは聞き流す事が出来ず、その話題を口にする貴族に詰め寄り詳しく聞きに行く始末である。
藁にもすがるとは今の私の事を言うのであろう。
そして幾人かの貴族から聞き出した噂話を要約すると───
・ジュレミアに買われていった奴隷達はどんな状態であろうとも美しく蘇っている。
・その中には不治の病の者なども含まれる。
・どうやら粗悪な奴隷を買いあさっているのは新開発した高い効果のポーションの実験である。
・最近ジュレミアが急激に痩せたのもそのポーションのおかげではないのか。
・そして上記のポーションの漏洩を防ぐ為に奴隷商を引退したのでは無いか?
───この四点である。
実に胡散臭い話ではある。
胡散臭い話ではあるのだが今の自分にはその胡散臭い話に縋るほか無かった。
しかしだからと言って考えなしに行動する者は唯のバカである為信頼出来る者にここ最近のジュレミア、特に噂の真相を調べさせてみた結果、ジュレミアはあれ程儲けていた奴隷商を何の脈絡もなく畳んだ事、そして急激に痩せた事、いきなり粗悪な奴隷を買い漁っている事、その奴隷達は奇跡的な回復をするだけではなくとてつも無く美しくなっている事等の報告を受け、俺は決心するのであった。
◆
「で、私に貴方様、騎士爵をお持ちであるアレクサンドラ・エレキネスト様を奴隷として買い取れと………そう聞こえたのですが?」
「はい、その通りで御座います」
「ふーむ………そうは申しましても私には全くと言って理解できませぬ。騎士爵とは言えその爵位はご自身の武勲で勝ち得た爵位。それに一代限りでは無い歴とした爵位であり、それに伴い行く行くは男爵へと成ることが決定していると聞きましたが?」
「はい、私はこの腕、この身体一つで数々の武勲を挙げ、半年前の亜竜討伐に伴い竜殺しの名誉と共に騎士爵から男爵への陞爵が決定しておりました」
「して、その様なお方を奴隷とするにあたり私達には『帝国の貴族、それも竜殺しの英雄を奴隷に落とした』という悪評が流れてしまうのですが?」
「皇帝陛下にはその旨既に伝えております。それに、あなた方秘密結社は仮面を被るので素顔はバレないのでは?」
やはり、この俺が自分自身を奴隷に落としてくれと言う言葉を目の前のジュレミアは簡単には信用してはくれないみたいである。
しかし、そうなることは想定済みの為出来る対策は全てし、聞かれるであろう言葉も想定済みである。
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