第365話 その手があったか

「「「「そんな事ありませんっ!!」」」」

「………失礼」


何故そこでウルさんまで声が被ってしまうのか?


「その手があったか………」


そして彼女達を見ていたノア様がポツリと呟く。


一体全体どの手があったというのか。


新しい辱めの方法であろうか?


どうやらノア様には後でしっっっっかりと言い聞かせ無いといけないらしい。


しかし今はそんな事よりもレクレーションである。


レオやアルビンは筋肉バカと純粋バカなので二人は既に彫刻刀を手にしガシガシと「真似すんじゃねぇー!!」「お前こそ真似してんじゃねーかっ!大人気ねーのなっ!!」等と言い合いながらも角材を削って行っているのが見える。


彫刻刀の刃に魔力を通して削っているのか二人ともまるで粘土を削って行くかの如く角材を削って行くのだが、何故か二人とも頭に大きなドリル二本を携えた様な形をしているではないか。


ドリルが男性のロマンなのは分かるのだが頭に二本も大きなドリルなんか携えるなど全体的にバランスが悪くは無いのだろうか?


しかし、男性のロマンという物はそう言う物なのである。


無駄に無駄な機能や無駄な装飾、無駄なポージングや無駄な名乗り文句等々、兎に角『それ本当に必要なのか?』という部分にロマンを感じる生き物なのだ。


レオやアルビンも結局の所ドリル一個よりもドリルニ個、小さいドリルよりも限界まで大きなドリルを、という事なのであろう。


しかしわたくしから言わせて頂くとまだまだと言いたい。


男性は無駄にロマンを感じる時期を過ぎれば一切の無駄が無い機能美にロマンを感じ始め、最終的にはこの二つが融合するのである。


果たして彼ら二人は今、どの段階までそのロマンを昇華させているのか見ものである。


そんな事を思いながらわたくしは神父に確認を取る。


「裏庭の雑木林を使って表現してもよろしいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ。しかしながら雑木林などを扱うとおっしゃる貴方様の作品がどの様な形へと作られ、そしてどの様な表現をなされるのか今から既に楽しみですね」

「ありがとうございますわ、神父様。レクレーションに取られた時間、三時間でどこまでできるのか分かりませんが神父様のご期待に応えれる様に頑張ってみますわね」

「はい、頑張って下さいね」


そして神父様から言質を取ったわたくしは雑木林へと向かうと想像を膨らましながら良い太さ、良い角度の枝を見つけては削り、見つけては削って行った。


「で、出来ましたわ」


そして出来上がったのは生きた木々の枝から生える様にして立つ仏像の数々。


それらはまさしく、前世で一度は訪れてみたいという場所を再現した光景が広がっていた。


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