第358話 スカスカのスポンジ
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思わず校門前で見たくもない顔を見つけてしまい、それだけではなく何故か一直線でわたくしの元へ向かってくるその姿を目撃し、思わず前世の家族へお手紙を想像で書いてしまいましたわ。
しかし、所詮は羽虫ですもの。
羽虫如きに何時間も悩まされるというのも馬鹿らしいので気持ちを切り替えて授業に参加致すべきですわね。
この授業一つとて先生方がわたくし達の見えない部分で努力をして下さっている事をわたくしは前世で知りえておりますもの。
前世の学生時代は座っていれば勝手に先生が授業を開始してくれるものと思っておりましたが、何事にも準備という作業が必要である、そうこの授業一つとっても先生がわたくし達生徒が帰った後に明日の授業の準備をしてくれているからこそ、一年間滞りなくわたくし達は教科書分の範囲の授業を受ける事ができるのですわ。
もちろん先生のお仕事はそれだけではない事くらい理解しております。
故に、先生という職業が如何に大変であるかという事もうかがえて来るという物でございましょう。
例え、目の前の講師が前世で言う算数の範囲を黒板に書きなぐっていようとも、『既に理解しているから』と、先生方の授業をないがしろにして良いという言い訳にはなりませんわ。
え?授業を聞かず妄想で時間が過ぎるのをただ待っているだけではないのかって?
それこそ失礼ですわね。
このわたくしが───あ、授業終了の鐘の音が鳴りましたので、失礼いたしますわね。
その鐘の音と共に聞こえて来る、廊下を走る足音にわたくしはげんなりしてしまう。
「オイババァぶへぇあっ!?」
そして例の足音はわたくしのクラスの前まで来ると勢い良く扉が開き、件の悩みの種の原因が勢い良く入って来るなり開口一番、この可憐でか弱い乙女な深窓の令嬢であるこのわたくしに向かってなんだかとんでもなく失礼極まりない事をほざきかけた気がした為、彼の顔目掛けて空気砲を見舞ってやった。
幾ら可憐でか弱い乙女と言えど、仏の顔も三度迄である。
問答無用で打ちのめしても何ら問題ないでしょう。
問題があるのはこの、可憐でか弱い乙女であるこのわたくしを捕まえてあろう事かババ───とにかく失礼な言葉を吐くこの者の脳味噌ですわ。
スカスカのスポンジなんじゃ無いのかしら?
「オイッ!バッ………フランッ!!貴様今この俺様の事を見て失礼な事を考えていただろうっ!!」
「いえいえ、そんなまさか。代々宰相となり皇帝の右腕として君臨する家系の長男であり、未来の宰相候補として頭ひとつ抜きん出ておられますアルビン・ダウニー・リアム様に向かってそんな事、思う筈もありませんわ。(頭だけが良くても、その性格はクソガキそのものですわね。ジャリボーイの称号を与えましてよ。悔しければこのわたくしの様に大人の余裕を一ミリでも持ったらどうですの?)
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