第357話 オイそこのドリルッ!!
◆
拝啓
前世のお母様、お父様、そして妹。お元気で暮らしてらっしゃいますか?
わたくしは相も変わらず元気に暮らしております。
今現在わたくしが暮らしております帝都ですが四月に入り暖かな日々が続き思わず怠惰な日常を過ごしそうになってしまう己の弱さと日々戦っております。
思い返せば冬の時期、雪が積もっているから来ないだろうと思っていたメインキャラクター達が週に一回はわたくしの家へと訪れ無駄にきづかれをしてしまいました。
ちなみに、帝都では今餅つきが流行っており五分も歩けば一組は餅をついている光景が目に入ってきます。
久しぶりに食べたお餅の味は涙無くしては味わえない程に前世の記憶を蘇らせてくれましたが。
くれましたがこの餅をついたのが脳筋のレオという事でわたくしが何を言いたいかお分かりかとおもいます。
「オイそこのドリルッ!!」
あの野郎、ではなくてレオは先ほど申しました通り脳みそが筋肉で作られており、基本的には力で押し切ろうとするのです。
ここまで言えば我が家族の方々もお分かりかと思いますが力任せに叩いた結果破損した杵の欠片が偶にお餅に入ってしまったのです。
勿論、餅を丸める前には目を凝らして全て取り除いたはずでしたが、それでも杵の破片は取り除かれておらず、と言ったしだいでございます。
殴ってやろうかと思いましたわ。
話を戻しまして、四月と言えば出会いと別れの季節でございます。
それはこの帝都でも変わらず、わたくしも本日から一学年上がり二学年となります。
言い換えればこのわたくしに後輩ができるのです。
今一度学生という青春時代を味わえる事に戸惑いこそはありますが、模範となる先輩としてやって行こうという気持ちはあるのですが、果たしてか弱い乙女である今のわたくしにそれができるかいささか不安でもあります。
「オイッ!!ババァッ!無視してんじゃねぇっ!!」
「………あ?」
「そ、そんな人を殺しそうな目で睨んでも無駄だからなっ!!糞ババァ、ぶへあらぶほぅっ!?」
やはり、春ゆえに暖かくなったのは良い事ではございますが、すこし目障りな羽虫も飛んでいるみたいですわね。
わたくし、淑女でございますから羽虫と言えど虫は苦手でございますので手で触りたくはございませんが目障りなのは間違いないので思わず扇子で叩いてしまいましたわ。
わたくしもまだまだ淑女失格ですわね。
ですが逆にわたくしほどの淑女故にギャップ萌えという副産物が生れてしまう事は致し方ない事だと思いますわ。
あぁ、虫、怖いですわぁ。
また虫に集られる前に早く教室へと行ってしまいましょう。
いくら空を飛べる羽虫と言えども二学年の棟にはおいそれと来れないとおもいますし。
まだまだ話したい事も山ほどございますが、今回はこれにて失礼させて頂きますわ。
末筆ながら、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
敬具
転生から16年春の月
フラン・ヨハンナ・ドミナリア
前世の家族一同へ
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