第355話 今帝都で有名な喫茶店

そして、鎖自慢をするものほど操りやすし、とノア様は教えられているのであろう。


言い換えれば、権力を振りかざし、奴隷が鎖に不満を持つような状況になってはいずれ国が、会社が、亡びるという教えでもある。


その、ほんの少しでも良いから我が両親にもその心があればとは思わずにはいられないのだが、そもそも前提として我が両親は貴族以外を人間として見ていないという最大の欠点がある為、残念ながら無理な話であろう。


そしてブラックローズの現状こそ奴隷の鎖自慢大会の巣窟となっている上に、なんなら自慢の鎖やそこに繋がった首輪もピカピカになる程磨き上げてしまう上にどちらが奴隷として優秀かを競ってしまう程になってしまっている事などつゆ知らずフランは呑気に考察する。


「………は?フランは一体何を言って………っ!?なるほど、良い得て妙だな。確かに的を射てる」

「何をぶつくさ言ってんだよ」

「っ!?」


そしてフランの話を聞いたノア様は何かに気付いたのかぶつくさと呟き思考の海へと潜って行てしまうのだが、レオに頭をしばかれて思考の海から戻って来れたようである。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「まだ決まっておりませんわ」

「かしこまりました。では、決まりましたらこちらのベルをお鳴らし下さい」


そしてメニュー表をテーブルの中心に置き、各々商品を選び終えた事を確認した上フランは机の上に置かれたベルを一つ鳴らす。


すると洗礼された動きで先ほどとは別の店員が来ると選び終えたメニューを聞き、そして聞き出したオーダーを告げにカウンターへと戻って行く。


「おうおうっ!!ここが今帝都で有名な喫茶店かっ!?」

「そうでやんすっ!!兄貴っ!!」


その、問題なく業務をこなせている従業員の姿を目に一人感慨深い感傷に浸っているその時、店の入り口から乱暴な言葉と態度と共に四名程の冒険者と思われる人物たちが来店してくる。


その冒険者達の胸元には皆鉄のプレートが見受けられる。


「おら、そこをどけお前ら。この冒険者ランク鉄のパーティー、狼の遠吠えもガガガガガガっ!?」

「いと尊きお方の店で、更にいと尊きお方がいるこの空間で、お前たちのようななんの利益にもならない者達をそのまま店内に入れる訳が無いでしょう。出て行って下さいね」


そして彼らが鉄のプレートであるのは性格に難があるから冒険者ランク鉄で足踏みしているのでは?と思わずにはいられない、と思っていたその時、一人の女性従業員がその物腰柔らかそうな表情や声音と違い先ほどの冒険者達を乱暴に店外へと一気に追い出していくとそのまま外で先ほどの冒険者達と大立ち回りの末一人でボコボコに叩きのめした後何事も無かったかのように店内へと「先ほどは失礼致しました」という言葉と共に頭を軽く下げて戻ってくる姿が見える。

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