第352話 笑顔が眩しすぎて直視できない

後ろから「兄上!お待ちください兄上っ!」と俺を呼ぶ弟の声が聞こえてくるのだが、安心して王位継承権(貴族がらみや政、それら全ての面倒事)は弟に引き渡してやるから安心したまえ。


出来た弟を持って兄は嬉しいぞっ!!





季節は巡って冬。


魔術学園は学園祭が終わると同時に休校である。


というのも貴族の生徒がほとんどを占めるこの魔術学園は、雪が降っては馬車移動できなくなるのでその前に生徒達を帰省させるためである。


これはいうなれば私にとって唯一心休まる心の休息とも呼べる期間でもあるのだ。


いくらメインキャラクター達とは言えこの雪降りしきる帝都を馬車で移動などできようはずがないからである。


と思っていたわたくしがバカでしたわ。


そう思い目の前のメインキャラクター達を『キッ』と睨みつける。


しかしわたくしにも矜持と言うものがございますので睨みつけはするものの声を荒げたりなどはしない。


けして後ろに我が母親がいるからではない。


これはわたくしの矜持なのである。


「こんな雪降りしきる中大変でしょに、わざわざわたくしの住む家まで来て下さらなくてもよろしかったですのに」

「お、心配してくれるとは珍しいな。なに、馬車は使えずとも歩いて来れば問題ない上にいい筋トレにもなるからな」


そう言うとニカッと笑うレオの笑顔が眩しすぎて直視できない。


わたくしの歯に衣着せた言葉で「こんな雪の中来てんじゃないわよ」という言葉の意味は脳筋のレオには届かなかったみたいである。


「ああ、それに俺にとっては炎魔術の訓練にもなるしな。か、勘違いするんじゃないぞっ!!お前の為に来てやった訳じゃないんだからなっ!魔術の訓練のついでだっ!」


そしてレオの言葉の後にノア様がまるで古き良きツンデレキャラの様な反応を見せ、素直に気持ちが悪いと思ってしまう。


ちなみに、ツンデレとは今と昔で意味が異なるのだが、このノア様の場合は今現代(厳密に言うと前世で死ぬ間際)の意味でのツンデレである。


あ、その他の女性陣達は大歓迎でしてよっ!!ささ、我が家をご案内致しますので、外は寒いでしょうし早く入って頂戴なっ!!───と言いたいのも山々なのだが流石に母親の眼が光る前では言える訳もなく断腸の思いで男性陣も我が家へ招いて差し上げる。


これに関しては決して母親が怖いとかではなく、我が娘はレズではないかという心配をかけない為のわたくしの優しさ故の行動であり、決してお母様が怖いとかではないのだ。

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