第282話 自分を褒めて差し上げたい
嘘も方便ともいう言葉も御座いますのでここぞとばかりに取ってつけたような嘘を並べて行く。
お父様には悪いのすがこればかりは真実をそのまま教える事は出来ませんので、ここは素直に騙されて頂きたい。
「そ、それは本当なのか?フランよ。本当にその子竜であるツキヨミを親代わりに育てて欲しいと親竜から言われたのか?事と次第によってはとんでもない事になるんだぞっ!?今からでも遅くないから親竜の所へ返しに行こうっフランっ!一人が怖いならば父さんも一緒に行ってあげるからっ」
「大丈夫でしてよお父様。そうですわね、わたくしの言葉が信用できないと言うのでしたら親竜であるスサノオをここに呼んで差し上げますわ」
「ちょっ、待てフランっ!早まるなっ!」
血相を変えて早まるなと叫ぶお父様ではあるが、残念、もう既にこの武器、天叢雲を通じてスサノオを呼んでしまっておりますわ、お父様。
結局のところ親竜から言質を頂かないと不安で仕方ないのであるのならば、実際に親竜であるスサノオを呼んで来るしかないでは御座いませんか。
そしてわたくしはこうなる事も見越して朝起きた段階でスサノオを呼んでおりますのでもうそろそろ此方に来る頃だと思いますわ。
なんと出来る女性なのだろうか、自分で自分を褒めて差し上げたいですわね。
そんな事を思っていると玄関が妙に騒がしくなって来ると同時にメイド長であるリーシャが、流石メイド長という様な洗練された所作で現れ、その動作は昨日のリーシャと同一人物と思えないですわね、と密かに思う。
「旦那様」
「何だこんな時にっ!今大事な時だと言う事が分からないのかっ!?これだから平民は使えないのだっ!!」
「第二王子であるノア様一行がいらっしゃいました」
「の、ノア様だとっ!?それを先に言わんかっ!全く使えやしないっ!!直ぐに御通しするのだっ!後料理の準備もであるっ!」
相も変わらず貴族至上主義であるお父様のがなり声を聞いて、『あー、この光景は前世の糞上司を思い出すなー』などと思っていると奥の方から「いけませんノア様っ!少しの間玄関でお待ちくださいっ!」
「そんな悠長な事を言っている場合ではないのが分からないのかっ!?黒竜が真っ直ぐ此方に向かっていると言う情報があるのであるぞっ!?」と言う声が聞こえて来るではないか。
その声にわたくしはげんなりとなってしまうのも仕方の無い事であろう。
ですからお母様、そんな目線でわたくしを見つめないで下さいまし。
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