第279話 なんだ、そんな事か

「頭の弱いエルフで御座います。拾って来ました」


そんな感じでツキヨミを撫でていると雑木林からウルが何かを引きずりながらやって来た為、引きずって持って来た物が何なのか聞いてみるとエルフであると言うでは無いか。


エルフは犬猫みたいに拾って来れるものでは無いと思いますが………元あった場所へ捨てて来なさいとも言えませんし………どうしたものか。


「ちなみにコイツが今回のツキヨミ殺しの主犯で御座います」

「すぅー……すす、捨ててらっしゃいっ!!」

「分かりました。そうですよね、フランお嬢様にはこのゴミが知り得る情報など既に頭の中に入っておいでですよねっ!!元あった場所に捨てて来ますっ!!」


そしてウルは何故かわたくしを尊敬している眼差しで見つめ、わたくしの指示通りこのエルフを元あった場所へ捨てていこうとする。


しかし、良く見れば瀕死状態である事を確認し、捨てた後で死なれては夢見が悪いという事で最低限の回復魔術を施してやるとウルに続き更にメイまでもが尊敬の眼差しを向けて来る。


「成る程ですっ!敵を泳がして、更に背後にいるであろう大物を釣るという布石ですねっ!」

「そ、そうですわよ。よよよよく分かりましたね」


あ、危なかったのですが何とかわたくしの大女優ばりの超絶演技によりこの場を切り抜ける事ができましたわ。





今、わたくしは朝っぱらから一生分の勇気を振り絞って朝食の席に着いた両親にツキヨミの件を報告しようとしている。


そんなわたくしをお兄様は何か感じ取ったのかわたくしを見てはニヤニヤと表情を崩す。


あの表情である。


どうせ『何か怒られるような事をしでかしたのであろう』とでも思っているのだろう。


いや、あれは絶対にそう思っている表情である。


「……あのー、……そのー、実はお母様とお父様に言わなければいけない事がございますわ」

「どうしたんだフラン、今更改って。怒らないから言ってみなさい」


そうは言うがお父様よ、となりのお母様の表情を一度見て頂きたい。


怒らないのは有難いのですが、お母様から守っても欲しいと思うのは欲張りなのでしょうか?


そのお母様の表情をみたお兄様の表情もついでに見て頂き、後日説教もしてくださるとわたくしとしても日頃の溜飲が下ると言うものでございます。


「それがですね、ペットが欲しいなーぁ………なんて」

「なんだ、そんな事か。しっかりと躾けをするのであれば別に構わないぞ。また新しい奴隷でも飼いたくなったのか?」


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