第278話 自然と笑みが溢れてしまう
そう思うと自然と笑みが溢れてしまう。
そして私は意識を手放した。
◆
「あら、ウルさんが戦闘に入ったらしいですわね、大丈夫かしら?」
今現在私がいる場所より少し離れた場所、その道から外れた雑木林の奥深くからまるで嵐の如く轟音がこちらまで聴こえ、想像以上に敵が魔術に長けていると知り思わず少し心配になって来る。
「きゅいきゅいー」
「あら、ツキヨミも心配してくれるのですのね、良い子でわたくしは嬉しいですわ」
そしてわたくしの腕の中ですっぽりと、まるで本来そこにあるべき脂肪の塊の代わりに───では無くて、兎に角わたくしに抱きかかえられているツキヨミも一緒になって、まだ会っていないウルの事を心配してくれてるみたいである。
そのことからも既にツキヨミは人間で言うところの小学生低学年程の知能がある事が伺える。
このままスサノオを反面教師にしつつ良い子に育って欲しい限りである。
「ふむ、我とした事が怒りで真実を見失う所であった様であるな。我が妻よ、少しエルフの国へ行ってくる所以、ツキヨミの事を頼んだぞ」
「あっ!ちょっとっ!!」
「分かっておる。我妻は無駄な殺生は嫌いなのであろう。大丈夫である。こう見えて我は平和を重んじておる故心配する様な事は起こるまいて。それでは、少し寂しくはなるがしばしのお別れである」
「違っ、いや、違わないですけれどもっ、このツキヨミをどう家族や学園に言い訳すれば良いんですのっ!?」
そしてスサノオは何かを感じ取ったらしく今からツキヨミを置いてエルフの国へ向かうと言い、ドラゴンの姿へ変化すると飛び立って行った。
そもそも自分の子供を今日会ったばかりの、自分で言うのもなんですが小娘に預けて行くなど、子供を何だと思ってらっしゃるのか一度真剣に説教をして差し上げたいのですけれども、そうすれば「そういうお主だからこそ信頼でき、預ける事が出来るのであろう?」と返して来そうで、想像しただけで溜め息が出てしまう。
「きゅい?」
「そうですわね、こんなに可愛いんですもの。お父様やお母様もお許しくださりますわ」
「きゅいきゅいっ」
「そうですわね、スサノオにはキツくお灸を据えなきゃいけないとわたくしも思いましてよ」
あら、なんだかんだでツキヨミと意思疎通出来ておりますわね。
何ででしょう?と疑問に思うもだからと言ってデメリットも無い為、まいっかと思考を放棄する。
「お嬢様、戻って参りました」
「はい、お疲れ様で………何ですの?それ?」
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