第270話 即答であった

「きゅいきゅいーっ」


そして二人(匹)の親子は嬉しそうに返事をしてわたくしが付ける仮の名前を今か今かとキラキラした瞳で見つめてくる。


「そうですわね、スサノオとツキヨミというのはどうでしょう?」

「おぉおっ!良いではないかっ!!良いではないかっ!気に入ったぞっ!我が妻よっ!!」

「きゅいきゅいー」


仮の名前である為些か手抜き感は否めないのだがここまで喜んで貰えるとは思っていなかった為、それならばもう少しちゃんと考えてあげるべきだったか?と少しだけ思ってしまう。


ですが既にチビドラゴンもといツキヨミは、この名前が気に入ってしまっているらしく『きゅいきゅい』と上機嫌である為、今更『やっぱり無し』とは言えない雰囲気である。


ちなみにマザコンもといスサノオについては、本人がそれで良いのならばわたくしは別に何も言いませんわ。


「では、我が妻よ。私はやるべき事があるのでここを離れるが、なに、寂しがる事は無いぞ。私より、私の牙で作ったこの武器を其方に託すのだが、その武器へ其方の魔力を一秒程の感覚で三回流し込んでくれるとすぐさま逢いに向かうゆえ気にせず呼んでくれたまえ」

「いえ、結構ですわ」


なんか急に、まるで彼女に自分が購入したスマホを渡す彼氏の様な気持ち悪い事を言いはじめるスサノオに思わず引いてしまい、食い気味で遠慮してしまう。


基本的にそういう場面で渡す物には盗聴器およびGPSがばれないように専用のアプリの様な物があらかじめインストールされており、アイコンもバレないように透明なアイコンにされているのである。


見知らぬ者または会ったばかりの者から頂き物を貰うというリスクを考えるべきなのだ。


タダより高い物は無いとも昔から言いますしね。


こんな見え透いた、罠の匂いがプンプンするような物をわたくしがそうやすやすと首を縦に振ると思わない事ですわ。


残念ながらわたくし、そんな安い女性ではございませんの。


「因みにだが、この武器は今でこそ槍の様な形状であるのだが、手にした者に一番合う武器に姿形を変えるという珍しい能力があってだな、小さき者達の間ではそれこそ国を治める王ですら買うことが出来ぬ一品よ」

「頂きますわ」


即答であった。


当たり前である。


金額どうこうよりも、自分に一番合った武器に姿を変えるなど、手にしない訳が無いじゃないですか。


男には自分を曲げてでも貫かねばならぬ時がございますの。


どうせ、このスサノオのする事などわたくしの力と知識と技術を持ってすれば、この如何にも怪しい武器に施されたストーカー御用達機能の様な気持ち悪い何かしらの付与等即座に見つけ出して解術して差し上げましてよ。

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