第267話 人間という枠を取っ払いました

「そして、我が伴侶となる人間の娘よ。其方に竜の祝福を授けよう」

「ちょっ、待って下さいなっ!」


そして目の前の黒髪長髪の美男子がそう言うと、わたくしの制止の言葉等聴こえていないとでも言う様に、効果の全く解らない付与魔術を施して来た。


すると、わたくしの身体から力が湧き上がり、魔力も一気に増えた事を感じ取る事が出来るではないか。


この様な付与を施す事が出来るエンチャント系の魔術等聞いた事も見た事も、もちろん体験した事も無い。


しかし、確かにわたくしの身体は以前のわたくしとは比べ物にならないくらい全てにおいて数段階上がっているのである。


それは、聞いた事も見た事も体験した事も無い魔術が確かに存在している事を意味していた。


「わ、わたくしの身体に一体何をしたんですの?」

「先程言った通り竜族、それも王族にだけ伝わる原始魔術の一つ、竜の祝福である。そもそも私は其方を我が伴侶と決めたのである。だと言うのに其方の寿命が小さき者と同じとあってはたった数百年しか一緒に過ごせないでは無いか?だから我々竜族は伴侶と決めた者が他種族であった場合、その者の寿命を強引に伸ばす魔術を作り上げ、代々王族のみに今日(こんにち)まで伝えて来たのである。と、言えどもエンシェントドラゴン全員王族に当たるためある意味ではドラゴン全員使う事が出来、ドラゴン以外は使う事が出来ない魔術とも言えよう。あぁ、因みにだが他の羽トカゲとの違いは言葉を喋れるか喋れないかで判断出来る」


そしてこの黒竜へ、わたくしにどの様な魔術を施したのか聞いてみると、とんでもない返答が返って来た。


言い換えれば『人間という枠を取っ払いました』と言う事ですわよね…………は?………はぁぁぁぁああああっ!?


「何しくさっているんですのっ!!そもそもわたくし万が一結婚するとしてもお相手は人間が良いですわっ!それ以前に貴方と結婚、この場合番いになるのはお断りさせて頂きますっ!!」

「はっはっはっ。大丈夫、大丈夫である。先に番いになる相手が決まっていたのならばそれも良いだろう。我は寛大である。力で全てを手に入れようとは思わぬよ。だがな、小さき者の寿命等、特に人間と言う小さき者は100年と生きる者が極端に少ない。であればたかだか百年くらい待つ器量くらい私は持ちあわせておるぞ」


そしてわたくしは黒竜の番いになる事を肯定した覚えは無い上に、番いになるとも言っていないにも関わらずこの黒竜、もといボンクラは人の話を全く持って聞いてなどおらず、尚も番いになったと仮定して話を進めてくる。


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