第265話 強烈な殺意である
そして見えるは身の丈十メートルはありそうな漆黒の巨軀、その巨軀と同じ長さの太い尻尾、月の光を遮り辺りを暗闇にしてしまう程の翼、そして…金色に光り輝く両眼、その爪、その牙、それら全てが死を連想させる事が容易に出来る程の存在。
その身体は漆黒の鱗で覆われ、月の光を反射しているその姿は息を呑むほど美しいとさえ思ってしまう。
「グルルルルルルルルルッ」
そしてあちらもわたくし達の存在に気付いたらしい。
目が合うや否や強烈な殺気と殺意をわたくし達へ隠そうともせず放って来る。
まるで人間という種族そのものを憎んでいるような、強烈な殺意である。
その生き物、それはまさにドラゴンであった。
「フランお嬢様っ!あ、アレッ!!」
「……成る程っ、そういう事ですかっ!!全く、人間という生き物はっ!好奇心は猫をも殺すと言う言葉をその足りない頭に叩き込んでやりたいですわねっ!!」
メイが叫びながら指差すその先には上半身と下半身が離れ離れになった男性の遺体と、その傍に小さな黒い何かが横たわっているのが見える。
その何かを視界に入れた瞬間、わたくしは一気にその何かへと距離を詰め、抱き抱える。
「ひ、酷い………」
このドラゴンが何故、ここまで人を憎むのか、その理由がそこにはあった。
尻尾も入れると体長一メートル程のそれは背中に矢が刺さり、その鱗は所々傷付き、その羽は切り裂かれ、そして、死に絶えていた。
「グルルルアアアアァァァァァアアッ!!」
「あぁ、もう暴れるなっ!!本当に間に合わなくなるぞっ!!」
この際言葉口調等意識する時間すら惜しい。
わたくしがその小さな骸を抱き抱えたのを見たドラゴンが狂ったように攻撃してくる為結界魔術で防ぎはするものの目障りである為、ドラゴンには申し訳ないのだが少し遠くの方で大人しくしてもらおう。
そしてわたくしは小さな骸を抱きかかえたままドラゴンの攻撃の嵐を掻い潜り、その顎を蹴り上げるとその勢いのまま腹を蹴り上げ吹き飛ばす。
「メイさん、後は任せましたわっ!」
「はいっ!フランお嬢様っ!!ドラゴンさんっ!貴女のお怒りも分かりますが、今はしばらく大人しくしていて下さいっ!」
わたくしは吹き飛ばされてもなお、こちらへ向かって来るドラゴンをこちらへ来ないようにする様にメイさんへ指示を出す。
そして、『任せた』の一言でメイさんは全てを理解したらしく、ドラゴンがこちらへ向かって来ないように壁として立ちはだかってくれる。
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