第253話 悔しくなんてないんですからねっ!!
ちなみにセバスが居ない所で粗相、もといレッドラインを超えてくれば良いのではと思うのだが、セバスが居ない所でもセバスが生み出した魔獣が常に見張っている為にそれも叶わないという事は、一度レッドラインを越えようとした際に、その手前で簡単に阻止され後日こっ酷く叱られた事により経験済みである。
それと同時にメイド長であるリーシャの、恐怖対象のカースト最上位はドミナリア家からセバスに変わった瞬間でもあった。
そんなメイド長リーシャと執事のセバスの裏の攻防が今もなお行われている事など露知らず、わたくしは良いポジション、岩場の多い場所へ陣取ると針に餌であるミミズを針の大きさより少し長めで切断して付け、浮きは付けずにそのまま落とし込むと、餌が底に着底する前に何かが釣れる。
「釣れましたわっ!」
そして釣り上げるは黄緑色した実にカラフルな、掌より少し大きめ程度のサイズのベラという魚であった。
「………に、西日本では高級魚と言いますし?生食も出来ますし?外道だとは思っておりません事よ。ええ。むしろ本命ですわ」
そもそも地球と同じ魚が釣れる事に違和感はあるものの、この世界は人間も馬もいるのだ。
魚も同じ生き物が居てもおかしくないであろう。
そう、これはわたくしの前世が引き寄せた魂の共鳴的な───
「うおっ!?良い引きだぜっ!!っとととっ、見ろフランっ!!お前の変な色のちっぽけな魚と違って、この俺がお前の為に黒い鯛みたいな魚を釣ってやったぜっ!!」
「きぃいいっ!!レオの癖に何空気を読まずに黒鯛なんて釣ってますのよっ!!そこはこの世界にしかいない魚を釣りなさいよっ!!気が利きませんわねっ!全くっ!!」
「何で怒っているのか理解出来ないのだが、やっぱ日頃の行いの差なんじゃねぇのか?」
「………言うじゃありませんか。その喧嘩、買いましてよっ!」
何が『お前の為に』ですかっ!!レオの、脳筋の癖にこれ見よがしに自慢して来て、今に見てなさいっ!!ほらっ、わたくし程の貢献レベルともなれば餌を落としただけで即座に釣れまして………。
「さっきと同じ魚だな。どうする?買い取った喧嘩を返品するか?」
「返品しませんわっ!!」
「俺も、銀色の鯛みたいな魚が釣れましたよっ!フラン様っ!!」
「俺は真っ赤な鯛が釣れたぞフランっ!!」
そして、オズウェル様はヘダイを、ノア様が真鯛を釣り上げて来る。
く、悔しくなんてないんですからねっ!!
「お嬢様ー、私も鯛っぽいのが釣れましたよーっ!!」
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