第149話 どれ程の悪事を行ったというのか

 その事をこの馬鹿はまるで分かっていない。


 だから馬鹿だと陰で見下され、だから前教皇を毒殺した後教皇として弟が育つまでの傀儡としておいていたのである。


 そもそもこの歴史だけが無駄に長いせいで遂には国を名乗る程の権力を持った世界的にも信者が多い宗教、キーリ教なのだがその実態は何も知らない市民を騙して金をむしり取る詐欺集団であるとここにいる馬鹿以外には周知の事実である。


 神の奇跡があると言うのならば私を不老不死にした上で全知全能にして欲しい位である。


 それどころか難病や飢餓に苦しむ人々にすら神の奇跡とやらは起こらず、一体いつになれば救いの手を差し伸べてくれるというのか。


 宗教として我々が行う事と言えば神の教えと称した誰でも分かるような常識を、その事に疑問視を持たれない様に思いつく限り記載され「神は偉大である、だから教えを守ればいずれ何とかしてくださる、だから寄付しよう」と思わせる経典と、年数回行われる祭りという名の大規模な寄付集め会である。


 もともとこのシステムはトップだけが、今で言う教皇だけが儲ける仕組みであったのだが長い年月と共に教皇の周りも高い権力と財力を手にできるようになり、ついに先代教皇の代でその立場が逆転したのである。


 しかし、この事実に私は妻と子供たちが領主の息子に殺されなければ気づきようが無く、未だしがない離れの村の牧師を愛する妻、そして子供たちとともに細々と、しかし幸せに満たされながらやっていただろう。


 一体妻と子供たちがどれ程の悪事を行ったというのか。


 もし神がいるとするのならば何故罪も何も無い、貧乏でも良い行いをしようと慎ましくも献身的に生きてきた妻や子供達が死んで、領主の息子のクズが今ものうのうと生きているのか私が納得できるよう教えて頂きたいものである。


 私の妻と子供たちは金貨三枚の価値でしかないのか、たった金貨三枚で領主の息子の行いはもみ消されてた上に何事も無かったの如く暮らせていけるのかと。


 私が納得出来る様に今すぐにでも教えて頂きたい。


 そして私はこの時やっと真実に気付く事が出来た。


 神などいないと。


 そこから私はこのキーリ教の事を今までとは違って疑いの目でもって調べ上げた。


 その事によって分かった事は、やはり神などいないという事である、と。


 それと同時に私はキーリ教へ復讐する事を誓ったのである。


 その復讐もようやっと最終段階まで来たのだが焦りは禁物であるとぐっと堪えて時期を待つ。

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