第133話 触り心地は最高であった
そして至近距離のフランの寝顔を堪能した後、恐る恐るフランのほっぺをつついてみると「んん………っ」と吐息を漏らすだけで一向にフランは起きる気配を見せない。
そしてフランのほっぺは柔らかく触り心地は最高であった。
思わずもう一度触りたいという欲求を抑えきれす何度もつついてしまうのだがやはりフランは起きる気配を見せない。
ならばと俺は大胆にもフランの頭に掌を乗せ優しく撫で始める。
なんだこの幸せな時間は?
なんだこの感覚は?
フランを撫でれば撫でる程フランを愛おしいと思う気持ちが、幸せだと思う気持ちが強くなって行くではないか。
人間はこれ程までに他人を愛おしいと思えるものなのかとある種の驚きに似た感情も感じてしまう。
もういっその事今この瞬間が止まって仕舞えばいいのにと、いくら王族といえど──いや、王族故にそんな不謹慎な事を思ってしまうのは仕方のない事だと俺は言いたい。
あれから何度撫でたであろう。
時間も忘れて俺はフランを慈しみながら優しく撫でていたのだがその幸せな時間もフランが起きてしまう事により終わりを告げる。
そのフランの表情は、驚愕、恐怖、羞恥、怒り、で塗りつぶされていた。
その事に少なからずショックを受けるもだからと言ってフランの頭を撫でる事は辞めてあげない。
撫でるのをやめたら逃げてしまうような気がして、お願いだから逃げないでと思いを込めて優しくフランの頭を撫で続ける。
「起きた?」
そしてできるだけフランを刺激しない様に優しく語りかける。
するとフランの表情には微かではあるもの確かに好意の感情が加わる事を俺は見逃さなかった。
それだけの事で俺は嬉しくて叫びそうになるのだがそこはグッと堪える。
「お、乙女の寝顔を盗み見るなどというその行為、セクハラで訴えましてよ……っ!」
「どうぞ。でもそれだとセクハラで訴えられる前にフランを堪能させて貰うとするよ」
あぁ、このようにフランと会話を出来たのはいつぶりであろうか?
遠足で最近何故か避けられていたフランとまた以前の様な関係とは行かないまでも良い関係まで回復出来たと思っていたし実際以前の様に当たり障りない会話も、遠慮の無い笑顔も見れた。
しかしフランは遠足以降、いや──あの日見た路地裏の光景以降また俺を避ける様になり、それどころか心を閉ざしてしまった。
そう思ってしまうと俺は居ても立っても居られなかった。
居られる筈がない。
今もこうして目の前で愛しい女性が追い詰められているのである。
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