第130話 断るという選択肢一択

 それこそ命が惜しければ三年逃げに逃げればいいのである。


 その場合起こりうる死亡フラグがどのようにわたくしの身に降りかかるか見当もつかないという事もあるのだが、それでも真っ向から立ち向かいフラグを片っ端から折っていくよりかは安全であると言えよう。


 結局のところわたくしがなんだかんだと言い訳をして逃げておらずこうして真っ向から立ち向かっているのは神に売られた喧嘩を買ったからに他ならないのである。


 そんな自分勝手な事柄にただでさえ関係ないブラックローズの面々を巻き込んでしまっており、申し訳なく思っているのだ。


 ブラックローズのメンバーを増やすのならばまだしも、そこから何故全く関係のない者たちを巻き込まなければならないのか。


 この件に関してはノア様どうこう関係なく断るという選択肢一択である。


「そうか、そうか。それは残念だな。 でも、フランがどうしても折れそうなとき、負けそうなときはいつでも俺を頼ってもらって構わない。それはフランを手伝うなどではなく、愚痴を聞く等でも構わない。 とにかくフランが潰れてしまいそうな、折れてしまいそうなときは俺の事を頼っても良いと、俺がフランの心の拠り所なれば良いなと思っているという事を心の片隅にでも留めてもらえたら、今はそれで我慢しよう」


 ノア様のその言葉に、わたくしの心の拠り所になりたいと言うその思いにわたくしは思わずうなずきそうになるもぐっと堪える。


 弱っている時の甘い言葉は総じて罠であると、わたくしは思っている。


 弱っているからこそ余裕が無く、思考もおぼつかず、目の前に差し出された甘い言葉に何も考えず身を任せたくなる。


 これはある種の拷問により有力な情報を聞き出す為の常套手段である。


 だからこそここでわたくしはノア様の甘い言葉に惑わされてはいけないのである。


 以前のわたくしであればそれでも良いだろうし、この甘い言葉が罠であろうが真実であったのであろうがその責任を負うのはわたくし一人でよかった。


 しかし今のわたくしには、自身の行動による結果は良くも悪くも秘密結社ブラックローズのメンバーでもある奴隷娘達にも降りかかるのである。


 その事を考えれば今この時期にノア様からの甘い言葉はどう考えても罠の可能性が高い為、ノア様に助けてと叫び伝えてしまいたいというわたくしの中の弱い心を見て見ぬふりをして強引に封じ込める。


「分かりましたわ。 ノア様の申し出、心の片隅にでも仕舞っておきましょう」

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