第126話 なんと浅ましい事か
もし邪な気持ちを持ってしまう者がおりましたらわたくしの元へ連れて来なさい。
このわたくしが直々に説教して差し上げましてよっ!
あぁ、同じシャンプーとトリートメントを使ってる筈なのにめちゃくちゃ良い匂いがカミーラから匂って来ますわぁ。
た、体臭からその者の体調や感情が分かるという話もありますし、ここでわたくしがカミーラの頭に鼻を付けて深呼吸するという行為は何も疚しい事では御座いませんので勘違いしないでいただきたいですわねっ! まったくっ! まったくっ! けしからんっ!!
おっと、ヨダレが………。
◆
わたくしカミーラは浅ましい娘で御座います。
それは何故かと言いますとわたくしカミーラは今現在実の親をダシに使って今フランお嬢様に抱き付いているのですから。
なんと浅ましい事か。
あぁ、同じシャンプーとトリートメント、石鹸を使っておりますのにフランお嬢様からとても良い匂いが致しますわぁっ!!
もうわたくしこの幸せを噛みしめる事が出来るのならば浅ましい娘で結構で御座いますわぁーっ!!
あぁ、あぁ、なんと甘美な香りっ! なんと甘美な肌触りっ!! 天国はここの事で御座いますねっ!! 皆様っ! 天国はここで御座いますっ!!
そしてわたくしがフランお嬢様を堪能していると、その時は不意に訪れた。
なんとっ! フランお嬢様がわたくしの背中に手を回して引き寄せた後、わたくしの頭を撫でて下さっているではないかっ!!
心なしかフランお嬢様のお身体が震えている様に感じますが、わたくしは何も気付きませんわ。
ええ、フランお嬢様がわたくしの境遇に心を痛めて泣きそうなのを、ここはわたくしが泣く時であると、自分が泣く時ではないと必死に我慢しているであろうその身体の震えなど全くもって気付きませんわ。
だって、その事を気付いてしまったのならば罪悪感で押し潰されてしまいそうだもの……あぁっですがそんな罪悪感なんかよりもフランお嬢様のかほりがっ!! 身体の感触がぁっ!! もうっ、もうっ! たまりませんわっ!!
◆
やはりカミーラはなんだかんだで強がっていたのであろう。
意を決してカミーラを抱き寄せた後その頭を優しく撫でてあげるとカミーラは更に先程よりも震え出すと強く抱き返して来てわたくしの胸元へと顔を埋めて来る。
どんな親であろうとその子供からすれば親は親なのである。
何も思わないわけがない。
そんなカミーラを見てわたくしの邪な感情はいつのまにか消え去っており、代わりに新たな決意が宿る。
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