第77話 わたくしのロマンの結晶


 所謂、堕ちるところまで堕ちた独裁者とはどこの世界も同じであるというある意味で良い事例ではなかろうか。


 そしてわたくしは扇子を取り出すとゴミムシに向け、そして銃を撃つ動作をする。


「ぎゃぁぁぁぁぁあああっ!? 痛いっ!? 痛いぃぃいいっ!!」


 するとルーベルトは右太ももを抑えながら汚い声を上げて転げ回りベッドから落ちてもなお声を上げて床を転げ回る。


 わたくしがやった事は幅一センチ長さ、十センチ程の鉄の針を扇子に予め仕込んでおり、それを飛行魔術の要領で打ち出した後雷魔術により作り出した電磁力により目的地点まで道を作ると共に一気に加速させただけである。


 前世で言うところの鉄の針版リニアモーターカー、又は亜種型のレールガンである。


 それをルーベルトの太ももめがけて射ったという事である。


 この武器の利点は音速さえ超えなければ音がしない事、そして絶対に当たるという物である。


 はい、飛行魔術と並びこの武器もわたくしのロマンの結晶である。


 レールガン。


 作れるのならば作るのがロマンというものである。


「その聴くに耐えない叫び声を止めないともう一発行きましてよ?」

「ひぃいっ!? ふぐぅっ、うぅうっ、辞めてくれ……っ!」

「何をこの程度で泣き言を言っているのですか? 貴方は国民にこれよりも酷い事をしていたじゃないですの。 わたくしがその程度の事も知らないとでもお思いでして? そしていたぶられている者が辞めてくれと懇願して貴方は辞めまして?当然貴方が戦争を辞めると心から誓うまで続けますわよ」

「わ、分かったっ! 誓うっ! 誓うからもう勘弁してくれっ!」

「言いましたわよね?わたくし、『心から誓うまで続ける』と」

「ふ………ふざけんなっ!この儂が誓うと言っておるのだぞっ!?これ程の物音を立てていればそれを聞きつけすぐさま護衛が来るだ──」

「知ってまして? 真空って音を絶対に通す事も無ければ音そのものが無いのですわ。 そしてこの部屋は真空の膜で覆っておりますの。 あぁ、この世界には無い化学という分野の話ですので分からなくても結構ですわ。 ただ、この部屋で発生した音は絶対に外には漏れる事が無いという事さえ理解して頂くだけで結構ですわ」


 そしてわたくしはルーベルトを撃っては魔術で回復させるを繰り返して行った。


 しかしこのルーベルト、今まで我慢すると言う事をして来なかったのであろう、五分も経たず心は折れ、帝国とは戦争をしない事を誓う。


 しかしこれだけではまだ足りない。


 何故戦争というものが起こるのかと言えば極論を言えば他の国よりも自分の国の方が大事だからである。

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