第76話 権力に溺れた人間はなんて愚かなのであろう
ただ、手段が手段な為今現在では空中に停止する事は出来ないのだがそれは微々たる悩みであろう。
所謂戦闘機と同等の移動手段であるという訳である。
そして、この世界で空中を飛ぶ事ができる魔術を使用出来るのがわたくし達ブラックローズのメンバーだけという事は言い換えれば制空権を独占しているという事であり空さえ飛んでさえいれば負ける事は無く、個で数百人規模を相手にしても余裕で制圧出来るという事である。
しかしながら戦争ともなれば話は別でありわたくし達だけで王国の戦闘兵士全てを相手に出来るかと言えばそれは土台無理な話である。
所詮は人間一人の魔力量は変わらない為魔力が尽きれば羽をむしり取られた羽虫の如くその圧倒的な数の暴力により踏み潰されるであろう。
ではどうするか? と言えば答えは簡単であり頭を真っ先に潰す、それはもう徹底的に、完膚無きまでに、絶対に敵対してはいけないとその感情を国上層部に徹底的に植え付ける。
シンプルかつ最も手っ取り早い方法である。
「と、言う事ですわ。 第七代国王陛下、ルーベルト・キングニスク様」
そういうわたくしのその仮面越しから見える目は相手を見下している事が手に取るように分かるであろう。
それ程までに、セバスからの報告を聞いたわたくしはこの国王に対してはらわたを煮えくり返している。
「そんな出鱈目を誰が信じると思うかっ!! 無礼にも程があるぞお主っ!! それにその仮面は何だっ!? 国王である儂の前で素顔を隠すなど言語道断であるぞっ!!」
「ふーん、国民の事など二の次で自分の欲望のままに生活をし、その国民の目が自分に向く事を恐れて仮想敵国として帝国を槍玉に挙げて隠れ蓑にしようとし、更にはその政策により自国民から麻薬中毒者が出ても見て見ぬ振りしているゴミムシよりかは人として胸を張れる人間だと……わたくしは思いますけど?」
「あぁ? この儂がいるからこの王国があるのだぞっ!? そんな偉大である儂の為に犠牲になるのだっ! 何が悪いっ!!」
贅を尽くした豪華絢爛な部屋、その中央にあるこれまた豪華かつ大きな天蓋付きのベッド、その中から国王陛下であるルーベルト・キングニスクがわたくしの言葉も虚しく出鱈目であると一蹴し、無礼であると叫び散らす。
権力に溺れた人間はなんて愚かなのであろう。
かつて前世では実験により頑固なバカ程自分を賢いと思い、かつ視野が極端に狭くなり自分の間違いに気付かず真実を探さず調べずもしないという研究結果、そして権力を持った人は人の心を考える事が出来なくなり、かつ不正をしやすくなりそれら全てを正当化する傾向があるという研究結果も出ている。
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