第71話 そう、わざとなのですわ
思わず日本人の様な彼の顔に見入ってしまっている事を指摘され、わたくしの自己紹介がまだであった事を思い出す。
ちなみに最後噛んだのはわざとですわ。
そう、わざとなのですわ。
初っ端から噛む事により相手の第一印象を悪くする作戦ですわ。
このわたくしが噛むはず無いじゃないですか。
あと、両家のお母様方達、わたくしが一目惚れしてアレックスを見つめていたという理由じゃないですからねっ!!
二人で勝手に「あらあらまあまあ」と盛り上がっていますのが見えましてよっ!
「ちなみに、アレックスさんの今の御職業をお聞きしても宜しくて?」
「すみません、フランさん。 今はまだ言えませんが近い未来、時が来たら必ずお伝え致します。」
「………そうですの」
んん? お見合いで自分の職業を言わないという事に少し引っかかるもののお母様が選んで来た相手である為やましい職業などでは無く、何らかの理由によりただ単に今は言えないという事に嘘はないであろうとその引っかかりは無視する。
どうせわたくしがレオの事を嫌っているという事を何処からとも無く耳にしたのであろう。
その為レオ関連の職業、帝国騎士団か近衛兵かのお偉いさんではないか?と思うのだがそんな事はどうでも良いのである。
わたくしがレオを毛嫌いしているのは騎士団や近衛兵云々ではなくレオその人の考え方、行動、価値観が嫌いなのである。
「すみません。お見合いだというのに……」
「いえ、大丈夫ですわ。 やんごとなき理由がおありなのでしょう?でしたら深くは聞きませんわ」
「では、本日はフランさんのそのお言葉に甘えさせて頂きます」
そして、そんなこんなでお見合いは恙無く終わって行くのであった。
◆
実に良い女であった。
良い女と言うと語弊があるかと思うのだが、良い女と言われ直ぐに想像する様な胸が大きく美人でありスラリと痩せているが程よく女性らしい肉付きもあるなどではなく『彼女しかいない』と思える程に良い女であった。
もちろんフランさんは胸は、まあ置いておくとして男性ならば誰もが二度見する程の美貌を持ち体型もある一点以外は理想的な体型と言えよう。
しかしそんな外見の話ではなく、フランさんの中身に惚れたと言っても過言では無いだろう。
彼女の発する言葉一つ一つ、彼女の行動一つ一つから彼女がどの様な人間であるのかが分かるというものである。
初めは帝国を偵察するにあたって当たり障りのない理由付けにドミナリア家の娘とのお見合いをセッティングしたに過ぎなかったし、公爵家と言えどうせ王国に食われる国の貴族である。
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