第69話 恋は盲目とは言いますが

「そもそもお母様はお前が人の話を聞いていない事を前提に空返事をするように仕向けて話していた節がある」

「………は?」

「その証拠に今日のお母様は普段しないのに直ぐに出かけられる様に荷物を側付きに持たせて直ぐに行動出来る様にして食事を取っていた事、それと余りにも早すぎる見合いの日取り、その全てがそう考えるとしっくりくる。 そう考えると恐らく今回の見合い話はお前が逃げられない様に用意周到に計画されている可能性が高いとみて良いだろう」

「そ、そんなぁ……ハメましたわねっお母様っ!!」


 お兄様の話を聞きみるみる顔を青ざめて行くわたくしをお兄様はとびっきり笑顔でこう言うのであった。


「だから諦めろと、そう言ったのだ。 妹よ」





 今思い返してもあの時のお兄様はわたくし史上一番腹が立った笑顔である。


 恋は盲目とは言いますがあれで貴族令嬢にモテモテと言うのですから貴族令嬢も見る目がないですわね。


 お兄様の本性を知っても好きと言えるのかしら。


「フラン様、何か悩み事ですか?」

「わたくし達が出来る事があればおしゃって下さい」

「ありがとう、ミシェル様、リリアナ様。 けど大丈夫よ。 憂鬱なのは今日一日だけですので明日になればケロッと元どおりですわよ。 心配させてしまったみたいで申し訳ないですわ」

「そ、そんな事御座いませんわっ!」

「むしろフラン様はもっとわたくし達に迷惑をかけて下さって、頼って下さって良いのですわよっ!」

「貴女達……」


 あぁ、ミシェル様とリリアナ様がわたくしの事を心配してくれてこうして声までかけてくれ、更に頼っても良いと言ってくれる。


 たったそれだけで憂鬱な気分が少しマシになった。


「そうだぞフランっ! この者達の言う通りだ!! 頼っても良いのだぞっ!! むしろ望むところであるっ!!」

「の、ノア殿下っ!!」

「流石ですわっ!!」

「わたくしノア殿下に聞いてほしい悩みが御座いますのっ!」

「わたくしもですわっ!! わたくしは最近ノア殿下を見ると胸のあたりが締め付けられてしまいますのっ! これは病気でしょうかっ!?」

「あっ、こらっ、お前たちっ! 今俺はフランと話しているのであってだなっ!!」


 そんなわたくしとお友達との大切な空間にノア様が土足で入り込んんで来た時はどうしてやろうか?下剤でも仕込んでやろうかしらと思ったのだが直ぐ様取り巻き達───ミシェル様とリリアナ様も含む───に囲まれてしまうのを見てザマー見ろっ!と少し溜飲が下がったのであった。


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