第68話 諦めろ妹よ
◆
「はぁ……」
今日は朝から憂鬱である。
それもこれも朝の朝食の時お母様からの一言からである。
目覚めは何時もの朝であった。
今日はメイがわたくしを起こしてくれて、メイドにより身嗜みを整えてもらい朝食へ、そのまま学園へと行く流れであると油断していた。
そもそも家族の会話など胸糞悪い内容の為基本的に聞いていないわたくしが悪いと言われればそれまでなのだが、今日はそれに加えてこれからメインキャラクター達をどうやって避けようかと、横でお母様がわたくしに何か話しているにも関わらずまた貴族至上主義ですかと聞こうとせず別の事を考えていた。
お母様がわたくしに話しかけている内容が見合い話であるとも知らずに。
「でね、フランさん。 このお方は──────でね、───────の方なのですが、──────をお勤めになっておりますの」
「良いと思いますわ」
「まぁっ! まぁまぁまぁっ!! フランさんもやはりこのお方が気になるのですわねっ! お母様は十五歳になっても浮いた話一つなく、見合いも全て断っているものでしたから嫁に行き遅れてしまわないか心配でしたのっ! では早速お母様は見合いをする旨向こう側に伝えておきますわねっ!あ、ちなみに先方も忙しいみたいですので見合いは今夜行いますわよっ!! 少し早いかもしれませんがお二人ともお若いのですから多少のこういったイレギュラーなど何ともないわよねっ! むしろそのイレギュラーが恋が芽吹く切っ掛けになったり致しますのよっ!わたくしとお父様みたいにっ! あら、やだもうこんな時間っ!? ではお母様もう行きますわねっ!!」
「えっ!? ちょっ!? お母様っ!! 見合いって何ですのっ!? 聞いてませんわそんな事っ!! お母様ぁっ!! 待って下さいお母様っ!!」
やられた。
見合いなんてそもそもするつもりなど無い上に今世では結婚すら捨てる覚悟で生活し、更にこれからの活動を考えているのだ。
見合いなどもっての外である。
そりゃわたくしも花も恥じらう乙女で御座いますので結婚、それも男性と結婚するという事に夢を見る事も御座いますわ……ま、まぁ女性も行けましてよわたくし。
しかしそれは夢だから良いのですっ!! そもそもわたくし、結婚が墓場であると知っておりますのっ!! お母様ぁっ!!
「諦めろ妹よ」
「で、でもっ! お兄様っ!!」
そんなわたくしの狼狽具合を見て笑いを必死で堪えながらお兄様が思いやりのカケラすら感じられない言葉を投げかけてくる。
今の態度と言葉、わたくし一生忘れませんからね、お兄様。
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