第40話 何が目的なのですか?


「「はいっ、ローズ様っ!!」」


 これはもう口酸っぱいくらい同じ事を告げている。


 はっきり言って口にしないと心配で押し潰れてしまいそうだからである。


 最悪わたくしが死ぬのは構わない。 いや、構わなくは無いのですけれども構わない。


 ですがこの作戦は結局のところわたくしが生き残るためだけの作戦である。


 その、わたくしの為だけの、わたくしが死にたく無いが為の作戦で全く関係無い者が死んでしまうのだけは決して許されない事である。


 だからこそ口酸っぱく感じる程に作戦よりも自分の命を優先させるしその都度その都度口にしないと不安になるというものであろう。


 ちなみに新人奴隷達にはわたくしの正体を明かしていない代わりにローズと名乗っている。


「それでは行きますわよっ、貴女達っ!!」


 その夜、一人の女性の掛け声と共に黒い薔薇達が夜空に消えて行ったのであった。




 誘拐された先で薄暗い部屋に連れて行かれ、椅子に縛られ座らされてから小一時間が経った。


 現在この部屋には私以外に髭を蓄え高級そうな衣服を着飾り、これまた高級そうなワインをグラスで嗜んでいる男性一人と、その男性の護衛であろう者が二人だけである。


「私を誘拐して何が目的なのですか?」


 以前の私であると冷静になれず叫んでいたかもしれない。


 しかし物事には根本があると理解している私は相手を刺激しない様に聞いてみる。


 はっきりって誘導の仕方など知識が無く分からない為一か八か単刀直入である。


「目的、そんなの決まっておろう。 金だよ金。 貴様が我が息子の通う学園に入学した事を知った時は神が私に与えてくれたプレゼントでありコールドウェル家を立て直せという御告げだと思ったし、事実そうであろう。 こうしてお前をいとも簡単に連れ去る事が出来たという事こそが何よりもその証拠であろう」


 自身をコールドウェル家だと言う男性は私が何も言わなくてもベラベラベラベラと喋ってくれた。


 自分の計画がここまで上手く行っているのかそれはもう実に楽しそうに。


 これがもし賊の部類であるならばまずどんな小さな情報ですら口にしなかったであろう。


 ましてや自分の家名などもっての外である。


その為私は──実はこの男はバカなんじゃないのか──という仮定のもと更に情報を引き出す為に話しかける。


「一体何故公爵家でもあるコールドウェル家が財政破綻しかけているのですか?」

「それはだな、奴隷を不正に買っていた面々が粛清され、その影響かジュレミアの奴が奴隷商売を辞めたからだよ。 そして我がコールドウェル家はその余波をもろに食らったわけだ」

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