第38話 何故フラン様は家族に言わなかったのか

 そして私は一つの事に気付いた。


 それは物事には全てなんらかの根本があり、起こるべくして起きるという事である。


 その事から自分なりに考えた結果フラン様はあの日の事を家族に伝えていないからドミナリア家は未だに動かない。


 では何故フラン様は家族に言わなかったのか。


 そこまで考えた所で私はハッとする。


 あの日のフラン様は私に嫌われる事を覚悟で何も考えようとせず感情のまま行動すればどうなるか教えてくれたのではないか?


 もしも叩いた相手がフラン様でなければそれこそ本当にあの日以降想像した最悪の結果になったかもしれないのだ。


 その為にキツイ言葉であえて言ったのでは無いか?


 そう思ってからというもの私の目線は気付けばフラン様を追っていた。


 そして私は分かった事がある。


 フラン様の側使えである三名の奴隷は明らかにフラン様の事が好きであると言う事である。


 三名の奴隷達がフラン様を見つめるその表情を見ればそんな事など簡単に分かる事であるにも関わらず私はあの日奴隷ってだけで不幸であると決め付け怒り、フラン様を叩いたのである。


 あの時フラン様がおっしゃった言葉一つ一つが私の胸に突き刺さって今もまだヅキヅキと痛む。


 今すぐにでも謝りたいと思うものの今更どの面下げて謝りに行けば良いのか。


「どうしたんだ? シャルロッテ。誰かに何か嫌な事をされたのか? 教えくれたら俺が注意してやろう」


 フラン様に謝りたいと思うも自分にはその資格が無い為どうすれば良いのか悩んでるいるとレオ様が心配して声をかけてくる。


 心配してくれるのは有り難いのだが、レオ様を見るとあの日自分の価値観を押し付ける私を見ている様な気になって気分が悪くなると同時にフラン様はこんな私を見捨てず手を差し伸べてくれたのだと、また一つ自分の中のフラン様の評価が上がって行く。


「レオ様には関係ない事ですので放っておいて下さい」

「今こうしてシャルロッテが苦しんでいるんだっ! 関係無いと放っておく事など出来るわけが無いだろっ! シャルロッテを必ず救ってやるっ!俺を信じろっ!」


 ああもうっ、もうっ! もうっ!!


「レオ様なんか大っ嫌いもう私に構わないで下さいっ!」



 そして下校時間。


 レオ様と一緒じゃない時を狙っていたのであろう。


 私は何者かによって誘拐された。


「フランお嬢様、シャルロッテ様が誘拐されました」

「…………やはりですか」


 シャルロッテの後を付ける様に指示を出していたメイのその報告に私は長いため息と共に、手にしているブラックローズの各種書類を片付けゆっくりと立ち上がる。




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