第31話 満面の笑顔で最悪な言葉を口にする

 まあ、所詮教室や食堂で食べたとてぼっちな事には変わりないのであるが。


 いや、わたくしの奴隷との二人飯である。


 ちなみにミシェルとリリアはノア王子の取り巻き、その中のその他大勢だったりする。


「フランお嬢様、準備が整いました」

「いつもありがとう、アンナ」


 そんな事を考えているとアンナがシロツメクサ生い茂る草原に、頑張れば四人は入れそうな純白のシートを敷き、アケビ蔦で出来たバスケットから二人分のお昼ご飯であるお弁当を出してくれる。


 今日のお弁当はメイ作のサンドウィッチとコーヒーである。


 ちなみにアンナは陶器製のポットに水魔術で水を注ぐと炎魔術で一気に沸騰させコーヒーを淹れる準備を始める。


 わたくしはこの、淹れる準備中に漂って来るコーヒーの薫りが前世の頃好きな香りであり、それは今も変わらない様である。


 前世の記憶を思い出すまでは紅茶派であったのだが今では断然コーヒー派である。


 ちなみにコーヒーは当然無糖だ。


 と、言うよりもこの世界には砂糖を苦味の塊であるコーヒーに入れるという発想は無くミルクか無糖かの二択なのだが。


 始めの頃は前世の様に飲んでしまい、まだその苦味に慣れていないわたくしの舌には少々その苦味がキツかったのだが、今ではその苦味にも慣れ、やっとその苦味の奥にある仄かな甘味も感じ取れる様になって来た。


 この時間この一時だけ、わたくしは死亡フラグを忘れることができる幸せな時間を噛みしめる様に大事に、大事に過ごす。


 しかし、だからこそ運命はわたくしにそんな幸せの時間を奪い去りに来たのであろう。


「途中で見失った時はどうしようかと思っちゃいましたよっフラン様っ」


 シャルロッテがわたくしの唯一と言っていい幸せな時間の中に土足で踏み入れて来た。


 そしてそのシャルロッテは満面の笑顔で最悪な言葉を口にする。


「フラン様っ、私と友達になって下さいっ!!」





「もうっ! 私に付きまとわないで下さいっ!! 私が誰と仲良くなろうとレオ様には関係ないでしょうっ!? あとフラン様の事を悪く言うレオ様なんか大っっっ嫌いっ!!」


 そうシャルロッテは叫ぶとフランが消えていった林の中へと、追いかける様に消えていった。


 ああ、大っ嫌い。 大っ嫌い、大っ嫌い、大っ嫌い、大っ嫌い。


 その言葉が光景が、頭の中で永延とリピートされる。


 あまりのショックに足に力が入らず立っている事も出来なくなり膝から崩れ落ちてしまう。


「そ、そんな………俺はシャルロッテ、お前の為を思って………」

「これでお前はこっち側の人間だな」

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