第27話 ロボトミー手術
次の瞬間、奴隷紋が奴隷化器具を突き刺した箇所中心に広がって行く。
契約内容は一番重い内容。
ご主人様が許可をしないと喋る事すら許されない代物である。
わたくしは奴隷契約により発言の許可をしていない為返事をする事が出来ないジュレミアへ語り始める。
「何を悲壮感に漂っているのですか? 貴方が今までやって来た事が跳ね返って来ただけでは無いですか。 あぁ、それと貴方の言葉を借りれば奴隷は人間では無いから何をしても良かったのですよね? ねぇ、悪魔の手術として禁忌とされているロボトミー手術という物をご存知でしょうか? あら? ご存じない? なに、簡単な手術ですわよ。 貴方の眉間部分の頭蓋骨に穴を開けて脳にあたる前頭葉を切断して神経細胞を遮断する手術ですわ。 安心してちょうだい。 貴方が今まで奴隷に行って来た様に死ぬような事は無いわ。 ただ記憶障害が起こり、受動的、意欲の欠如、集中力低下、言語能力の低下、全般的な感情反応の低下などが起こるくらいですわ。 え? なんでそんな事をするのかって? そんなの、貴方がなんらかの理由でこの奴隷契約が解除された時の為に決まってますわ」
そしてこの日を境にジュレミアという男は人が変わったかの様に真っ当な人となる。
更に帝国衛兵部隊や帝国近衛兵部隊などに大量の様々な証拠が、ある公爵家の執事にて信頼できると判断されたもの達へ渡され貴族十五名、更に違法奴隷売買を生業にしていた三つの組織が次々と逮捕されていったが、彼らからジュレミアに繋がる物は何一つ見つからなかった。
そしてジュレミアの経営する奴隷商はその日を境に奴隷の販売を辞めた。
◆
「お嬢様」
「朝です」
「…………んーっ」
わたくしはウルとメイにより何時ものように起こされると、もぞもぞと布団の中で動いた後身体をめい一杯伸ばして頭を覚醒させて行く。
作戦が上手く行った朝は気分が良い。
昨日まで自分にのし掛かっていたプレッシャーが綺麗さっぱり無くなったのである。
それはもう爽快なんて言葉では足りない位気分が良い。
「アンナ、ガマガエル邸から奪って来た秘密資料の数々は配り終えたかしら?」
「はい。 中身が見えない様に厳重に施した後黒い蝋燭にて薔薇の形を象ったシーリングスタンプで封をした物を仕事内容に信頼を置ける者へ託しました。 その際ドミナリア家と足が着かない様に変装する様にとも」
「よろしい。 その者がちゃんと仕事を完遂したかどうかは後日明らかになる事でしょう。 最悪その証拠が握り潰されて失敗したとしても後々蹴散らすまでですわ」
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