第24話 お嬢様の言う事に間違いはない

 わたくしにそのあたり前の幸せなど夢のまた夢であるにも関わらず。


 それでもわたくしは生きたいとあの日決意したのである。


 それこそ前世の知識や経験、更にはこの様な時の手管なども使えるのならば使う。



 むしろ今回の作戦であるがガマガエルを釣り上げる為に前世でネット検索しまくり得た知識、男性が喜ぶ女性の仕草やシチュエーションなどを使いまくった。


 そう思えば前世で得たモテテクも意義もあったという事であろう。


 …………前世で私がモテていたかどうかは、そういうのを検索するという時点で察してほしい。




 私は今人生で一番焦っていた。


 フランお嬢様は自分を大切にしない節がある。


 どうせ今回の作戦も自らの純潔を使い時間を稼ぐつもりであろう。


「急げっ、急げっ、急げっ!」


 そこまで考えると私は自然と自らの焦りが口に出てしまう。


 あの日、フランお嬢様の身体を私は傷物にしてしまった。


 幸い服で隠せる箇所であったのが不幸中の幸いであったのだが、だからといってその傷が消える事は無い。


 もうこれ以上お嬢様を傷物になんかさせやしない。


 私の焦りに呼応する様に一つ、また一つと黒い木に火が灯って行く。


 本当にこの黒い木に火を灯すだけで良いのかと疑問に思うが、あの叡智に長けたフランお嬢様である。


 フランお嬢様の言う事に間違いはない。


 そう思いながら私は約一カ月前の事を思い返す。


「このジュレミアという男を徹底的に調べなさい」


 フランお嬢様は家族の目を盗み調べていたのであろう。


 誰の協力も得ず、かと言って家族に知られる訳にはいかない為他人に協力を仰ぐ事も出来ず、おそらく家族を反面教師にしながら一人で戦っていたのであろう。


 今その事を思っても未だに胸が苦しくなる。


 そんなフランお嬢様のこの一言でウルとメイが日替わりで交代しながら徹底的に、帝都の奴隷界を牛耳る奴隷商人ジュレミアを約一週間足らずで調べ上げて来た。


 その手腕たるや流石フランお嬢様の奴隷である。


 そして調査の結果は真っ黒であった。


 奴隷を違法に集め貴族の面々に水面下で売りつけ、表向きは真っ当な奴隷商を演じている。


 そしてそれだけではなく集めた奴隷をジュレミア自らが、溜まった鬱憤の憂さ晴らしに暴行を加え動かなくなると別の奴隷に近くの川へ捨てて来るように命じるのである。


 はっきり言ってコイツは人間じゃない。


 今すぐにでも殺してやりたくなる気持ちをグッと堪える。


 自らの内で暴れ回る怒りの感情を抑える事が出来たのはフランお嬢様が冷静だからである。


 このクズを完膚なきまでに叩き潰すには今感情に流されて行動に移してはいけない、とフランお嬢様は態度で示してくれる。

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